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ヘルスケア専業REIT(リート)である「ヘルスケア&メディカル投資法人」は、2015年3月に東京証券取引所不動産投資信託市場に上場、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、病院を中心とした不動産物件へ投資している。同REITの資産運用会社であるヘルスケアアセットマネジメント(東京都千代田区)が、管理、運営を行っており、上場時に236億円だった資産規模は、現在648億円に拡大。直近の予想分配金利回りは6%を上回る水準となっている(2020年3月17日時点)。

 REITは投資家から集めた資金で不動産を購入し、そこから得られる賃料収入や不動産の売買益を原資として投資家に分配金を支払う金融商品で、投資信託の1つ。「不動産投資信託」とも呼ばれる。一般的なREITの投資対象はオフィスビルや商業施設、マンションなどだが、ヘルスケアREITでは、病院や介護施設などのヘルスケア関連施設が主な投資対象であり、国土交通省が定めた病院・介護施設保有に関するガイドラインに沿って運用されている。

図1●ヘルスケアREITの仕組みのイメージ(図:Beyond Healthが作成)

 ヘルスケア&メディカル投資法人の保有施設は35物件。施設のタイプ別ポートフォリオの内訳は、有料老人ホームが最多の31物件で、残りは有料老人ホームと病院を含む医療関連施設「シップ千里ビルディング」、医療関連施設「新潟リハビリテーション病院」、サービス付き高齢者向け住宅2物件となっている。地域別では、首都圏19物件と近畿圏8物件が大きなウエイトを占めている。

 同REITの運用方針について、ヘルスケアアセットマネジメントの木村秀則・財務管理部長は「対象エリアは底堅い高齢者施設需要が見込める3大都市圏と中核都市が中心。介護事業者(賃借人)の財務内容や施設の運営状況(入居率や人員体制など)が適切かどうかを確認した上で、物件を取得します。原則として、売買益を得るための保有物件の売却は行わず、あくまで長期的に安定した賃貸収益の確保を目指しています」と話す。

ヘルスケア&メディカル投資法人」を運用するヘルスケアアセットマネジメントの木村秀則・財務管理部長(写真:羽切 利夫)

ユニークな優待制度が目当ての投資主も

 気になる分配金について見てみよう。設定以来、安定的な分配金を出してきた同REITだが、2020年1月期の分配金実績と2020年7月期の予想分配金の合計は年間6470円になる見込み(2020年3月17日公表)。1口当たりの投資口価格(株価)は9万8000円(2020年3月17日終値)なので、予想分配金利回りは約6.6%となる計算だ。

「REITの投資主は、安定的な分配金を期待する投資家が多い」と木村氏(写真:羽切 利夫)

 これは、東証1部上場企業の平均配当利回り(約2.6%)を大きく上回る水準。木村氏は「当REITの投資主は、株式投資などとは違って値動きで売買差益を取るというよりは、分配金を継続的に受け取ることを重視されていて、その意味では期待に応えられていると思います」と評価している。

 同REITにはユニークな優待制度もある。投資主になると介護に関する無料相談のほか、投資主やその家族であれば介護事業者が運営する施設での無料の体験入居や入居一時金・月額利用料の割引などを受けられる。

 「この優待目当てで投資される投資主の方も少なくありません。優待のためのコストはREITの分配金原資を割いているのではなく、介護事業者のご協力によるものです。介護事業者にとっても、それが施設のPRになるという大きなメリットを理解いただいています」(木村氏)

価格変動リスクには注意が必要

 実際の投資に当たっては注意点もある。価格変動リスクがあることだ。図2の赤線は、2015年3月を100としてヘルスケア&メディカル投資法人の価格の推移を示したものだが、2017年には当初価格から40%以上下落した局面もあった。

図2●ヘルスケア&メディカル投資法人の株価と東証REIT指数の推移
2015年3月を100として指数化。赤線=ヘルスケア&メディカル投資法人、青線=東証REIT指数(図:ヘルスケアアセットマネジメントの資料を基にBeyond Healthが作成)

 2015年から2016年において、青線のREIT全体の値動き(東証REIT指数)を超えて価格が下落、その後の反発が立ち遅れたことも見逃せない。その理由について木村氏は「当時、中国株が暴落した『チャイナショック』によって不動産市況が大きく落ち込みました。その後の回復期において、大型物件を中心としたREITは賃料の値上げなどが期待できました。しかしヘルスケアREITは1物件当たり10億〜20億円程度と比較的規模が小さいため、他リートに比べ成長性の点で見劣りし、また賃料も長期固定契約のため成長が限定的である点が懸念され、パフォーマンスに差が生じたのだと思います」と分析する。

 一方で、賃料の長期固定契約は、景気の波に左右されにくく、安定したパフォーマンスを期待できることと裏腹だとも言える。また、「2017年7月末を起点とした株価は、東証REIT指数を上回って推移している」(木村氏)。過去の一時期の実績だけで優劣を判断するのは、早計と言えるかもしれない。

 同REITについて木村氏は、「近い将来団塊世代が75歳以上となり、少子化で親の介護の担い手が減っていくことを考えれば、介護施設への需要は今以上に高まるはず。もちろん当REITもこれまでの運用のノウハウを活用し、引き続き高い目利き力で取得物件を選別していく方針です。投資口価格も投資家の『ESG投資指向』の高まりという追い風もあって、これまで以上に株価の底堅さが期待できると考えています」と話す。

(タイトル部のImage:peshkov -stock.adobe.com)