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三菱UFJ国際投信が運用する「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次)」は、ヘルスケアファンドの先駆けとして2004年2月に設定された。実質的な運用は米国の運用会社ウエリントン・マネージメント・カンパニー・エルエルピーが行っている。

 2019年7月末日現在の基準価額(分配金再投資)は設定来3倍を超え、堅調な運用実績を示す(図1)。投資信託の評価機関モーニングスターによる顕彰で、2015年に国際株式型部門最優秀ファンド賞、2018年に国際株式型(グローバル・含む日本)部門優秀ファンド賞を受賞している。

図1●基準価額と純資産総額の推移
設定時1万円の基準価額(分配金再投資)は、2019年7月31日現在、3万円を超えている(グラフ:三菱UFJ国際投信の資料を基にBeyond Healthが作成)

 同ファンドの基本運用方針について、三菱UFJ国際投信外部委託運用部 シニア・ファンドマネジャーの小池麻理恵氏は「世界のヘルスケアビジネス全般の幅広いセクターを投資対象としてリスク分散を図り、個別企業の長期的な成長性を評価しながら銘柄選定している」と話す。

組入上位10カ国・地域
図2●投資地域はアメリカが全体の約7割を占める(表:三菱UFJ国際投信の資料を基にBeyond Healthが作成、2019年6月28日現在)

 ファンドの業種別の構成は設定以来大きくは変わっておらず、上位には医薬品、ヘルスケア機器・用品、バイオテクノロジー、ヘルスケア・プロバイダー/ヘルスケア・サービスなどが占める。国・地域別では米国が約70%を占め、日本の比率は約6%(図2)。

 「世界のヘルスケアの株式市場で米国は圧倒的なプレゼンスを持ち、米国企業の組み入れ比率は、設定以来7割程度で推移している。日本企業の組み入れが少ないわけでなく、ヘルスケアセクターにおける米国の存在感の大きさを示すポートフォリオになっている」(小池氏)。

有名企業でも同ファンドに組み込まれていない銘柄も

 個別企業について見ていこう(図3)。組入比率1位のアボットラボラトリーズは大手医療機器メーカーで、次世代の糖尿病患者向け血糖値測定器や心臓血管外科用機器の開発に取り組み、これらはいずれも患者への負荷が従来手法より小さい「低侵襲性」をキーワードとする製品だ。2位のノバルティス、3位のファイザーは日本でもおなじみの大手医薬品企業で、先進的な遺伝子治療薬や核酸医薬品の開発力に定評がある。

図3●組入上位10銘柄
組み入れ上位10社のうち8社が米国企業だ(表:三菱UFJ国際投信の資料を基にBeyond Healthが作成、2019年6月28日現在)

 「この他、20位以内には次世代の冠動脈ステントを開発しているボストン・サイエンティフィック(7位)、タンパク質の一種『抗体』と薬物を結合させた新しいタイプの薬として今後の普及が有望視されるADC(抗体薬物複合体)を有力商品に持つシアトルジェネティクス(16位)などにも投資している。先進的な研究開発力を持ち、成長が期待できる銘柄を組み入れているのが当ファンドの特徴と言える」(小池氏)

 一方で手術用ロボット「ダ・ビンチ」で知られる米国のインテュイティブ・サージカル社のように、注目を集める有名企業でありながら同ファンドに組み込まれていない銘柄もある。小池氏は「有力企業であっても株価が既に割高になっているケースもある。こうした銘柄は、適正な株価水準となるまで待つ」と説明する。

「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」の運用を担当する三菱UFJ国際投信外部委託運用部の小池麻理恵氏と岩上明義氏(写真:川田 雅宏)

 またiPS細胞を使った治療法などは研究室レベルでの成果が華々しくマスコミで脚光を浴びることが多いが、現時点では投資対象となっていない。治療法が確立され、上場企業となった段階で投資対象になるという。

最大の均衡要因は前回の米大統領選

モーニングスター「ファンド オブ ザ イヤー2018」国際株式型(グローバル・含む日本)部門で優秀ファンド賞を受賞した(写真:川田 雅宏、以下同)

 投資家の立場から見ると、ヘルスケアファンドのパフォーマンスには外的要因が含まれることも留意すべきだろう。「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」の運用成績は、医学界がヒトゲノムの全解読を終えバイオテクノロジーの飛躍的進化に期待が集まった2013〜2016年ごろ1つのピークを迎えたが、その後はボックス圏での値動きが続いている。この間も、ヘルスケア企業の業績は概ね右肩上がりであったにもかかわらずだ。

 この理由について小池氏は、「株価が均衡している最大の要因は前回の米国の大統領選挙における政策論争と分析している。ヒラリー・クリントン候補が薬価引き下げなどヘルスケア業界に逆風となる政策を掲げた影響が大きかった。現在もトランプ大統領が次回の選挙をにらんで、ツイッターで『米国の今の薬価は高すぎる』『国民皆保険制度を作るべき』という主張を発信しており、それが足元、関連銘柄の上値が重い要因になっているものの、運用チームではいずれも現実的ではないと考えている」と話す。

 三菱UFJ国際投信では、今後もヘルスケア市場の拡大と成長に期待ができるという。今までは治せなかった病気にも治療薬が造り出され、医療用機器等にも飛躍的改善が進むなど、近年の医療技術革新の成果が見え始めているからだ。

「株価はいずれ再評価される可能性が高い」と小池氏

 小池氏は「先進国のヘルスケア・バイオ関連企業の利益水準(1株当たり利益/EPS)は着実に伸びていて、2018年末の時点で2000年7月の約4倍となっており、2020年には約6倍となる見込みだ。近いうちに株価に反映されるものと考えている」と話す。

(タイトル部のImage:peshkov -stock.adobe.com)