キリンHD(ホールディングス)が新たな経営の柱として「ヘルスサイエンス事業」を打ち出すなど、食品・飲料メーカーの間で、「健康」を今後の成長エンジンに位置づける企業が増えている。しかし、これまで中核であった特定保健用食品(トクホ)が曲がり角を迎えるなど、今後の牽引役が見えづらい面もある。世界ではネスレなどが先行する健康分野へのシフトを、国内企業はどのように果たそうとしているのか。長年業界をウオッチしているみずほ証券の佐治広シニアアナリストに、注目点を聞いた。

佐治 広氏 みずほ証券エクイティ調査部シニアアナリスト
1990年、慶應義塾大学卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。1999年より、興銀証券(現みずほ証券)にて食品・飲料・トレタリー・化粧品等日用消費財業界を担当(写真提供:佐治氏)

2021年は特定保健用食品(トクホ)が制度化されて30年の節目の年となります。「明治ブルガリアヨーグルト」「花王ヘルシア緑茶」「ロッテキシリトールガム」など多くのヒット商品を生んだトクホですが、近年は2015年に誕生した機能性表示食品へのシフトが進むなど、曲がり角を迎えている印象があります。

 保健機能成分の有効性や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。これに対し、第2次安倍政権下の規制緩和の流れを受けて2015年4月に誕生した機能性表示食品は、販売前に消費者庁への届け出は必要ですが、事業者の責任において学術論文などの科学的根拠に基づいた機能性の表示を行うことができます。

伸び悩みも見られる特定保健用食品(写真:毎日新聞社/アフロ)

 機能性表示食品が急成長しているのに対し、トクホは今、明らかに伸び悩んでいます。商品開発にスピード感が求められる中で、時間やコストのかかるトクホの申請に二の足を踏む企業も出てきました。結果として、使い勝手のいい機能性表示食品の市場が拡大しているのです。

2020年末に発売され話題を呼んだキリンビバレッジの「iMUSE(イミューズ)プラズマ乳酸菌」シリーズも機能性表示食品でした。

 「iMUSEプラズマ乳酸菌」シリーズは、免疫機能では初となる機能性表示食品です。キリングループは35年にわたり免疫研究に取り組んでおり、2012年に世界で初めて、“免疫機能の司令塔”プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化できるプラズマ乳酸菌を発見しました。

 メカニズム的な優位性を持つこのシリーズを早い段階でマーケットに出し、展開していければ、開発にかける資源を次に控える免疫や認知症予防などの素材に振り向けていくことができます。免疫分野でトクホの許可を得ようとすると、こうしたスピーディーな展開は望めません。