バイオ創薬ベンチャーに強い追い風

米国ではバイオ創薬ベンチャーが存在感を示していますが、日本の会社はどうでしょう?

 創薬には通常10年以上の年月がかかりますから、日米間の20年の遅れを取り戻すのは容易ではありません。しかし今、日本のバイオ創薬ベンチャーには強い追い風が吹いています。大手製薬会社が言うところの“モダリティ(治療手段)の多様化”ですが、私は敢えて“異端技術の価値向上”と呼んでいます。

 例えば、遺伝子治療は2010年頃まで、大手製薬会社では異端扱いされていました。2002年に細胞に感染しやすいウイルスを、遺伝子を体内に運び込むベクター(運び手)として使う臨床開発が行われたのですが、ベクターの副作用で治療を受けた患者が白血病を発症して失敗に終わり、以降は研究開発が停滞したためです。

 しかし、約10年経って安全性の高いベクターが登場し、再び遺伝子治療が脚光を浴びるようになりました。2012年には遺伝子治療薬に先進国で初の承認が下り、2015年から2017年にかけて計6つの新薬が承認されました。その結果、ここぞとばかり欧米のメガファーマなどによる遺伝子治療ベンチャーの大型買収が相次いだのです。

 日本のバイオ創薬ベンチャーの中には宝ホールディングスの子会社・タカラバイオを筆頭に、1990年代から一貫して遺伝子治療の研究に取り組んできた会社があります。タカラバイオは、免疫細胞のT細胞にキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子を導入した「CAR-T細胞療法」などの技術で世界的に注目を集めています。

 国産の遺伝子治療薬として国内で初めて承認されたのはアンジェスの肝細胞増殖因子(HGF)を使った慢性動脈閉塞症治療薬「コラテジェン」で、開発期間20年をかけ、2019年9月に発売されました。同薬は間もなく米国での臨床試験フェーズ2bが始まります。