精密機器メーカーなどの間で、これまでの得意領域に加え、医療機器・ヘルスケア事業への強化・シフトを図る企業が増えている。例えば富士フイルムホールディングスでは、昨年新たに富士フイルムヘルスケアを設立。CTやMRIなどの画像診断装置に力を入れるキヤノンなどの動きも見逃せない。こうした事業戦略を株式市場はどう評価しているのだろう。2022年3月期決算を踏まえ、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小宮知希シニアアナリストに、注目企業の評価や課題などについて聞いた。

小宮 知希氏 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 インベストメントリサーチ部 産業・企業リサーチ課 シニアアナリスト
小宮 知希氏 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 インベストメントリサーチ部 産業・企業リサーチ課 シニアアナリスト
生命保険会社、コンサルティングファーム勤務を経て、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)、明治ドレスナーアセットマネジメント(現明治安田アセットマネジメント)、日興アセットマネジメントでアナリスト業務に従事。2010年、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社。現在は精密機器・民生用エレクトロニクスを担当。日経ヴェリタス人気アナリストランキング精密機械・半導体製造装置部門で、2022年は第9位に選出されている(写真提供:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
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富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルムHD)の2022年3月期業績は、過去最高益となる見通しです。中でも注目されるのが、4つある事業部門の中でヘルスケア部門の売上高がビジネスイノベーション部門を抜いてトップに立ちそうだということ。ヘルスケアは第3四半期(2021年4月~2021年12月)までの9カ月の通算でも、売上高が前年同期比で約1.5倍、営業利益が同約2倍と好調です。躍進の理由はどこにあるのでしょう?

 ビジネスイノベーション部門は、コロナ禍でリモートワークが進み、オフィスで働く人が減ったことなどにより苦戦が続き、2月に行われた第3四半期決算発表で通期の業績を下方修正しています。ビジネスイノベーションと単純に比較することはできませんが、ヘルスケア部門が伸びているのは事実です。理由としては、近年の積極的なM&A(合併、買収)が実を結び、営業やシナジー面での効果が生まれていることが挙げられます。例えば、バイオCDMO事業部では、2019年に米バイオジェンから買収したデンマークの製造子会社によるバイオ医薬品の開発・製造受託事業が好調で、売り上げ成長に寄与しています。