短くなったワクチンの製造期間

アンジェスのワクチンは早ければ9月にはヒトへの臨床試験を開始する予定と発表されています。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)が猛威を振るった時代から比べると、ワクチンができるまでの期間がずいぶん短縮化されているように思います。

 技術革新のなせる業ですね。とりわけ強烈な印象を残したのが米国のモデルナです。新型コロナウイルスのゲノム情報が公開された時点から着手し、わずか40日余りでワクチンを作り上げてしまいました。

 モデルナやアンジェスのスピード感の背景には、抗原とするたんぱく質を産生させるためにウイルスをRNAやDNAという“設計図”の状態で体内に持ち込む手法があります。ウイルスの一部のたんぱく質を用いるのが一般的ですが、この場合、ワクチンができるまでに半年以上かかるのです。

 モデルナやアンジェスの手法でも理論上はたんぱく質を使うのと同じ状態にできるとのことですが、気になるのは、このようなワクチンにはヒトへの投与実績がないことです。人間の免疫機能は複雑なので、計算通りには行きません。専門家の間では感染増強のリスクが指摘されており、時間をかけて慎重に安全性を検証することが求められます。

となると、実用化には、まだ時間がかかるかもしれません。

 ワクチンが広く利用できるまでには、1年から1年半はかかるといわれています。当面は、安全性が実証されている古い薬の新型コロナウイルスへの効果が確認されることに期待しています。今、小野薬品工業の慢性膵炎治療薬「フオイパン錠」や帝人ファーマの気管支ぜんそく治療薬(吸入ステロイド薬)「オルベスコ」が注目されているようですが、こうした薬で軽症や発症早期の人を改善し、中症者などには富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」……といったような治療の道筋が付けば、状況は大きく変わってくると思います。