高い成長が期待される世界のヘルスケアセクターにあって、その牽引役と評されるのが米国のヘルスケア企業だ。世界の株式時価総額上位50社を見ると、10位ジョンソン・エンド・ジョンソン、12位ユナイテッドヘルス・グループ、27位イーライリリー、28位ファイザー、32位アッヴィなど8社がランクイン(2022年5月末時点)。先進的な事業を手掛ける新興企業も多い。世界の投資家は米国ヘルスケア企業の何に期待し、どこに注目しているのか。直近の市場動向や注目企業なども含め、SBI証券投資情報部シニア・マーケットアナリスト(外国株担当)の榮聡氏に聞いた(このインタビューは、2022年6月1日に行ったものです)。

榮 聡氏 SBI証券投資情報部シニア・マーケットアナリスト(外国株担当)
榮 聡氏 SBI証券投資情報部シニア・マーケットアナリスト(外国株担当)
一橋大学商学部卒業後、カーネギーメロン大学テッパー・スクール・オブ・ビジネス修了。大和証券、大和証券投資信託委託(現大和アセットマネジメント)、野村證券を経て2015年4月よりSBI証券投資情報部に所属。国内外株式のファンド運用と運用助言、調査業務に長年携わる。欧州株式、ASEAN株式については現地での調査経験があり、企業をグローバルな視点から評価できるのが強み(写真:川田 雅宏、以下同)
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この数年で、日本の個人投資家の間でも米国株投資が大きく広がりました。とはいえ、米国の株式市場や上場銘柄については、まだまだ知らない部分がたくさんあります。そこで、まずは米国株式市場におけるヘルスケア関連銘柄の概要から、お伺いできたらと思います。

 一般に米国市場の上場株式は11のセクターに分類されていますが、そのうちの1つがヘルスケアです。日本でもおなじみのジョンソン・エンド・ジョンソンを始め、医薬品や医療機器の研究開発・製造を行ったり、医療保険や薬局などのサービスに従事したりする企業が多数あり、米国籍だけで1000社近くが上場しています。

 米国市場におけるヘルスケアセクターの比率は高く、時価総額比ではITセクター(27.1%)に次ぐ2番目(14.5%)に着けています。市場を代表する株価指数であるS&P500の採用500銘柄中65銘柄を占め、シェアは13.0%。日本の東証株価指数(TOPIX)採用銘柄におけるヘルスセクターのシェアは8.5%で、グローバル産業分類標準(GICS)11業種中5番目ですから、米国におけるヘルスケアセクターのプレゼンスがいかに大きいかが分かるでしょう。

米国のヘルスケアセクターでも、日本と同様、時価総額が大きく流動性が高い所謂「大型株」は、メルク、アッヴィ、ファイザーなど医薬品企業が中心です。日米の医薬品大手は、どんなところが違うとお感じになりますか?

 人口縮小時代に入った日本の医薬品大手は、今後、いかに海外で稼ぐかが大きな課題となっています。これに対し、米国は医薬品開発数、販売数共に世界最大のマーケットです。なにしろ、米国のヘルスケア関連の支出はGDP(国内総生産)の2割近くに上るわけですから、日本とはケタ違いです。結果として、米国の医薬品大手は国内事業と海外事業の差をあまり意識していない印象です。「米国で売れる医薬品をつくれば、海外でも売れる」と考えているのではないでしょうか。実際、米国のヘルスケア全体(医療機器を含む)の海外売り上げ比率は4割弱といったところです。バックに流動性の高い労働市場があり、ジョブ型雇用が一般的な米国の方が、企業経営に有利な面もあるでしょう。