Beyond Healthは、「健康で幸福な人生100年時代を可能にする」社会の実現に向けたビジョン「空間×ヘルスケア 2030」を提案し、それを具現化するためのプロジェクト「ビジョナリー・フラッグ・プロジェクト(VFP)」を進めている(関連記事:目指すは「空間×ヘルスケア」の社会実装)。その注目テーマの1つが未来の住宅「Beyond Home」で、住宅メーカーによる牽引が期待される。住宅セクターの概況と未来の住宅の胎動について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の姉川俊幸シニアアナリストに話を聞いた。
大手住宅メーカー各社の決算が出揃いました。2020年は緊急事態宣言下の4~5月こそ営業活動自粛で販売が低迷しましたが、6月以降は順調に推移しています。
住宅需要はマクロ環境に大きく左右されます。コロナ禍にステイホームの時間が長くなったことで住環境充実へのニーズが高まり、リフォームを含めた住宅取得機会につながりました。今は日米共にそうした環境面での追い風が吹いている状況です。一方、各社が付加価値を上げる提案を行ってきたことが奏功して、リーマンショック以降、戸建ての販売価格も上昇トレンドにあります。
この活況は当面続くのでしょうか?
米国と違って日本には少子高齢化による将来的な市場の縮小という課題があり、長期的な不透明感は否めません。着工要因としては、①世帯数、②建て替え需要、③ニーズのミスマッチ──の3つが挙げられます。③は例えば、国内では空き家が急増していますが、多くは立地やスペックに問題を抱えているため、オーナーは「それなら別の場所に新築住宅を」と判断するといったミスマッチのことを指します。この3つの合計が着工数を決めるわけですが、①の世帯数が減る一方で②と③は堅調を維持しており、中期的には今のような状況が続くと思われます。
今年の3月頃から、受給の逼迫による住宅用木材価格の急騰、いわゆる「ウッドショック」が顕在化しています。好調な市場に水を差すことにはなりませんか?
中小工務店では調達に苦慮するところも出てきていますが、大手住宅メーカーへの影響は限定的と見ています。大手の多くは既に今年度内着工分の建材を確保していますし、来年度以降についても現地や卸業者との交渉で供給の見通しが立っているはずです。