高齢化や低侵襲治療の拡大などにより、総じて好調が伝えられる日本の医療機器・精密機器企業。しかし、みずほ証券の森貴宏シニアアナリストによれば、「成長力という点で見ると、課題を持つ企業が多い」という。2030年に向け、新たなフロンティアを拓き、グローバルで活躍するために足りないものとは何か? 氏の見方を聞いた。

森 貴宏氏 みずほ証券エクイティ調査部シニアアナリスト
大阪大学大学院医学系研究科修了後、2001年から野村證券金融研究所にてアナリスト業務(医療機器業界)に従事。2007年から2016年まではメリルリンチ日本証券(現BofA証券)にて電力・ガス・石油業界及び造船・プラント業界の担当を兼務、2017年からは大和証券で中小型株担当とアナリスト業務を歴任。2018年より現職(医療機器・精密機器業界担当)。日経ヴェリタス人気アナリストランキング医療機器・サービス部門で、2021年は前年の第9位から第4位に躍進(写真提供:森氏)

医療機器や精密機器は、この3年ほどの日本の株式市場で最も高いパフォーマンスを記録したセクターの1つです。患者の体への負担が少ない低侵襲医療機器の分野で世界的な競争力を有するオリンパス、テルモ、朝日インテックなど、日本の医療機器の主力プレーヤーをどう評価していますか?

 医療機器は「ESG(環境・社会・ガバナンス)」や「少子高齢化」など社会的な課題とリンクすることから投資家に説明がしやすく、人気を博してきた経緯があります。結果として、主力プレーヤーの時価総額を見ると、2010年代後半以降は右肩上がりで推移しています。

 しかし、その成長の源がどこにあったかと言えば、中国や米国を中心としたグローバルな人口や経済の拡大です。成長を続けてきた中国も人口の頭打ちが見えてきましたし、GDP(国内総生産)の伸び率も昔ほど高くありません。現状維持の姿勢で今後も安定的な成長を続けていくのは難しく、さらなる成長のためにはグローバルな変化についていく必要があります。

 その意味で、日本の主力プレーヤーは今、大きな岐路に立たされていると言えます。各社が注力する低侵襲医療機器は、既に「あって当たり前」の成熟した市場であり、今後も一定の需要は見込めますが、付加価値を見いだしづらい状況になっています。