介護保険の導入以降、旺盛な民間参入により拡大が続いてきた介護ビジネス。超高齢社会の進展により、今後も高い成長が見込まれる。しかし、介護セクターは、深刻な人手不足や技術革新の立ち遅れなども見られ、サービスの質の向上に課題も残る。国の政策からも大きな影響を受ける介護ビジネスが、2030年に向けて成長を続けるためにイノベーションを起こすには、どのような点を克服する必要があるのか。大和総研の石橋未来研究員に聞いた。

石橋未来氏 大和総研政策調査部研究員
東京女子大学文理学部卒業後、2002年に大和総研に入社。企業調査部、投資戦略部、経済調査部などを経て2018年から現職。医療・介護分野を中心に、中長期的な視点での分析を担当。『日本経済新聞』『日経ビジネス』などのメディアでも活躍(写真:川田 雅宏、以下同)

介護セクターと言うと、プレーヤーは中小事業者が大半を占め、業務は労働集約型、なかなか利益を上げづらいイメージがありました。しかし、近年ではだいぶ様子が変わってきているようですね。

 現在の状況を見ると、介護事業者の倒産件数が2016年から4年連続で3桁と高止まりしている一方、2018年に過去最高の件数を記録したM&A(企業の合併、買収)は今年に入って再び活発化し、通年では2018年を上回るペースで推移しています。

 M&Aで規模の拡大を図る事業者もあれば、他業種の大手企業による買収も増えており、ここに来て業界の再編が進んでいる印象です。

経営体力の脆弱な事業者が淘汰される代わりに他業種の大手が参入するなど、プレーヤーの顔ぶれが変わってきているわけですね。医療・ヘルスケアの分野では今年、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたところもありますが、介護セクターはどうだったのでしょう。

 コロナ関連の倒産は上半期(2020年1月~6月)で1件と限定的です。また、医療では外出自粛による受診控えが多くの診療科で広がりましたが、介護では利用控えがショートステイやデイサービスなど一部のサービスにとどまりました。もちろんサービスの利用控えによって要介護度が重くなったケースがないか注視する必要はありますが、事業者の報酬を抑制するほどの事態にはならなかったようです。

 むしろ、コロナ・ショックで価格が急落したREIT(不動産投資信託)のうち、介護施設などのヘルスケア施設に投資するREITの相場は比較的早く回復しています。「新しい生活様式」への変化が求められる中、着実に進展する高齢化への対応で不可欠なヘルスケア施設の需要は、感染拡大によって左右されないとの見方が強かったのではないでしょうか。