日本の製薬会社は対抗できるのか?

医薬品企業の国際競争が激化しています。日本の製薬会社は対抗できるのでしょうか?

 医薬品最大のマーケットは米国です。米国は移民に寛容で、世界中から優秀なライフサイエンティストが集まっています。また、リスクを取って結果を残した人にはきちんと報いる文化があります。世界最先端の頭脳と成功者へのリワード、さらに完全な自由競争が行われていること、これが米国企業が優れた薬剤を作れる最大の理由です。

 これに対し、日本では薬価を決めるのは国ですし、公的医療保険制度もあります。これらがネックになり、このままだと日本の医薬品企業は全体として「縮小」へと向かわざるを得ません。日本の場合、同じカテゴリー内であれば薬価は均一でしたから、リスクを取って新薬を開発するより、二番手でちょっとした改良品を出すほうが儲けやすいという地合いがありました。日本の企業はこの“二番手狙い”を得意としていたのです。

 しかし、昨年行われた薬価制度改革は「日本でしか売れない薬は要らない。海外で売れる薬を作れ」というもので、革新的な薬とそうでない薬の価格は明確に区別されるようになりました。国内の販売重視でやってきた企業はビジネスチャンスが先細っていくことになり、各社はいま、「販売会社」から海外で通用する「開発会社」へとシフトチェンジしている最中です。

シフトチェンジはどの程度進んでいますか?

 会社によって“タイムラグ”があります。薬価制度改革が行われたのは昨年ですが、それ以前から少しずつ変化が始まっており、いずれこうなることは予測できたはずです。

 そうした中、中外製薬は2002(平成14)年という早い時点でスイスの大手エフ・ホフマン・ラ・ロシュと「戦略的アライアンス」を組んでいます。得意とする抗体研究の基盤と技術をグローバルに生かすために、早い時点で海外企業の傘下に入る選択をしたわけです。そしていま、ようやくその成果が表れ始めたところです。

 方向転換で遅れを取ったのが、国内最大手の武田薬品工業です。売上高の大半を国内が占めており、ある意味、日本的なマーケットに最も適合していた企業と言えるでしょう。

 同社は2014(平成26)年に英グラクソ・スミスクラインの子会社で社長を務めたクリストフ・ウェバー氏を社長に迎え、2016(平成28)年には「オンコロジー(がん)」「消化器系疾患」「希少疾患」「ニューロサイエンス(神経精神疾患)」の4つの重点疾患領域にフォーカスした研究開発へと大きく舵を切りました。

 こうした改革が奏功すれば、2020年代半ばには成果が出てくるかもしれません。しかしうまくいかない場合は、今販売している大型医薬品の特許が切れた後に、何かしらの構造改革を強いられる可能性もあります。