過去最高を記録した創薬ベンチャーの提携

昨年のインタビューで、「創薬ベンチャーへの投資の際に判断基準となるのがビッグファーマとの提携」とおっしゃっていました。日本の創薬ベンチャーの提携は今どういう状況になっているのでしょうか?

 日本の創薬ベンチャーと製薬会社との提携件数は、コロナ禍の2020年に過去最高の26件を記録しました。海外製薬企業との提携は17件で、ビッグファーマがこのうち4割強を占めます。ビッグファーマとの契約件数は前年比で倍増しており、日本の創薬ベンチャーに対する世界的な評価が高まっていると言えるでしょう。

 提携数は2021年も1~8月で16件(前年同期比マイナス1件)と高水準を維持しています。内訳を見ると、数が多いのは特殊ペプチドの世界的なリーディングカンパニーであるペプチドリーム。同社は1~8月に武田薬品工業、小野薬品工業、米アルナイラムの3社、さらに9月にも仏アモライトとの提携を発表しています。ただし、国内株式市場の活況で投資マネーが製造業などに流れ込んでいることから、現状、株価はぱっとしません。

 ペプチドリームと並ぶ“提携の雄”がそーせいグループですが、2021年1~8月期の提携件数はゼロです。しかし、こちらの株価は堅調に推移しています。大型提携への期待が高まっているためです。同社は米アッヴィから権利が返還されたムスカリン受容体作動薬プログラムの年内再導出を目指し、複数の企業と交渉中です。このプログラムにはアルツハイマー型認知症や統合失調症など複数の治療薬候補がセットされていますが、中でも統合失調症治療薬が有望視されています。

独ベーリンガーインゲルハイムや独メルクと提携したプリズムのような、未上場企業の“サプライズ提携”は今年もありましたか?

 はい。今年も未上場企業が大型提携を実現しています。

 今年前半最大のサプライズはハートシードですね。6月にデンマークのノボレルディスクと提携し、契約一時金・短期マイルストーンで5500万ドル(約60億円)を受領することになりました。契約収入は最大で総額5億9800万ドル(約660億円)に上る見通しです。ハートシードの開発品は、あのiPS細胞由来の物質(重症心不全患者を対象とした他家iPS細胞由来心筋球)です。iPS細胞関連でこれだけのビッグディールは初めて見ました。

 東京農工大学発のベンチャーであるティムスは、開発中の急性期虚血性脳卒中治療薬の第2相臨床試験の結果を受けて、米バイオジェンが全世界での独占的な開発権と販売権を持つことになりました。契約一時金は1800万ドル(約20億円)。ティムスは8月に東京証券取引所に上場申請を行っています。

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