1台1億円程度と見られるヒノトリの価格

ロボット手術に公的医療保険が適用され、患者の自己負担が軽くなれば普及が進むというわけではないのですね。

 ダヴィンチを購入し、5年で償却した場合(残存価値10%)、年間どれだけの手術を行えばペイするのか、メンテナンス費用(ダヴィンチの購入価格の5%)、消耗品代(1手術当たり病院の持ち出しが40万~50万円)、医師らの人件費(1手術当たり20万円と仮定)も加味しながら試算したことがあります。

 Xiの場合は、実に年間約300件の手術が必要という結果になりました。営業日ベースでほぼ毎日手術を行うことになり、これはかなりハードルが高い。前立腺や腎臓の手術が必要な患者は年間数万人ほどしかいないニッチな分野です。地方の病院では患者の確保が難しく、結果的にダヴィンチを購入しているのは、ほとんどが患者を確保しやすい大都市圏の病院です。

そうした中、いよいよ国産初の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム(以下、ヒノトリ)」が発売されます。川崎重工業とシスメックスが折半出資するメディカロイドが開発したヒノトリの参入で、状況が変化することはあるのでしょうか。

 先ほど指摘したダヴィンチの3つの障壁のうち2つはヒノトリによって克服できると考えています。

発売が待たれるメディカロイドのヒノトリ(出所:メディカロイド)

 まず、コストの問題ですが、日本ロボット外科学会で行われたメディカロイドによるプレゼンテーションでは、「ダヴィンチの半分くらいの価格帯を狙う」と紹介されました。ダヴィンチの廉価版Xの半額となると、1台1億円前後と想定されます(インタビュー時点でヒノトリの価格は未発表)。これを先の試算に当てはめると、ヒノトリの場合、ざっくり年間100件の手術を行えばペイできることになります。Xiの3分の1の患者を確保できればいいわけで、地方の病院に対しては大きな訴求ポイントでしょう。

 サイズもヒノトリはダヴィンチと比べてコンパクトに作られていて、移動が楽で、使わないときは隅に寄せておくことも可能ですので、手術室の稼働率を大きく損なう事は無さそうです。ロボットアームも人間の腕と同じくらいの細さで、アーム同士の干渉が起こりにくくなっています。

 ただ、3番目の診療報酬については、ヒノトリはダヴィンチと同じ分類に入りますから、加算対象の手術が拡大されない限り、改善は難しいでしょう。