グーグル系のヴァーブ・サージカル社に注目

対象手術拡大の動きはあるのでしょうか。

 前立腺や腎臓以外の臓器の手術も加算の対象とするためには、ロボット手術が合併症や出血のリスクを減らすとか、術後の入院日数を減らすといった医療経済的なメリットを示す必要があります。メーカーやユーザー側はそのために、水面下で多くの臨床試験を行ってきました。

 特に有望と考えられるのが胃がん手術です。対象となる患者数は前立腺や腎臓とケタ違いで、国内最大のマーケットになります。藤田医科大学病院総合消化器外科の宇山一朗教授らによる試験により、グレード3以上の術後合併症の発生率が、ロボット手術では腹腔鏡手術の半分以下に抑えられることが証明されました。

 これを受け、今年4月の診療報酬改定で胃がん手術が加算の対象となるのではないかとの期待が高まりましたが、結果的には見送られました。次回の改定は2年後の2022年、そのタイミングになればヒノトリも実績を積んでいるはずです。政府としても “国産初のロボット”に対し幾分配慮し時間的猶予を与えているのかもしれません。

ダヴィンチの持つ特許の大半が2019年で期限切れを迎えたこともあり、手術支援ロボット開発の動きが活発化しています。小池さんが有望だと考えるプロジェクトについてお教えください。

 国内の開発はスタートアップが中心です。どの企業も一長一短があり絶対的存在と言えるところはありませんが、私が今注目しているのは東京工業大学と東京医科歯科大学の研究室による大学発ベンチャー、リバーフィールドです。

 同社が開発するロボットの強みは空気圧駆動の技術を活用した「力覚フィードバック」で、臓器をつかむ感触を医師の手元に再現します。人体や患部は柔らかく繊細で、手術の際は触れたときの感覚が大変重要です。しかし、触感は人間特有のものですから、従来のロボット手術ではそこを犠牲にせざるを得ませんでした。

 この技術が商業化されたら、若手の外科医のラーニングカーブを大幅に短縮させる触媒になるのではないかという期待感があります。革新的なデバイスが出てくれば、VRやARを用いたトレーニングが可能になるでしょう。

大手企業の動向はどうなのでしょう。

 富士フイルムでは医療用AI技術の実用化が進んでおり、オリンパスは今年7月に発売した消化器内視鏡にAIによる診断支援の機能を付加する予定です。大手企業ではこうしたソフト面からのアプローチが増えていますが、これをロボットと合体させれば最強だと思いませんか。それを実現しようとしているのが、米国のアルファベット(グーグルの親会社)とジョンソン・エンド・ジョンソンが共同で立ち上げたヴァーブ・サージカルです。

 同社では、グーグルの機械学習やビッグデータ分析とジョンソン・エンド・ジョンソンの外科ユニットのノウハウを融合し、クラウドベースのデジタル手術のプラットフォーム構築を目指しています。昨年2月には軟性内視鏡ロボットを手掛けるオーリス・ヘルスを買収。製品化は2024~2025年に延期されましたが、ロボット手術を大きく近未来へと前進させるポテンシャルを秘めていると思います。

(写真:川田 雅宏)