エーザイの本命は「レカネマブ」?

アデュヘルムが治療現場に普及するには、越えなければならないハードルがたくさんあるのですね。他の新薬候補の抗アミロイドβ抗体も含め、田中さんは認知症治療薬の開発についてどういう見方をされていますか?

 アミロイドβを脳内から排除するスピードは、先行するアデュヘルム(アデュカヌマブ)よりもレカネマブやドナネマブなどの方が相対的に速い。先ほど挙げた3つの新薬候補物質については製薬会社も「フェーズⅢで臨床的意義がある結果を出したい」と自信をのぞかせており、私はそこに期待したいと思います。

 とはいえ、アデュヘルムの功績は侮れません。これまでの新薬候補がことごとく失敗してきた中で、臨床的な意義があるという結果を出したのですから。アミロイドβ仮説が正しいというエビデンスの1つになった、とも言えます。

アルツハイマー型認知症薬開発の歴史において画期的な一歩を踏み出したということですね。これから2030年にかけて長期的な視野で見ると、アルツハイマー型認知症薬はどう進化していくとお考えですか?

 足下、新薬開発はアミロイドβ仮説が正しいかどうかの実証段階まで来ています。言い換えれば、この20年何の進展もなかった病気の原因物質がいよいよ判明するのではないかという瀬戸際です。

 2022年にアデュヘルムが抱える課題をクリアするような新薬が出てくれば、業界全体が引き続きアミロイドβ仮説に則った新薬開発に注力していくことになると考えられます。

 現在の抗アミロイドβ抗体薬は、アルツハイマー型認知症の症状悪化の速度を抑制していますが、改善することはできません。速度の抑制だけでも十分に素晴らしいことだと感じますが、将来的には症状を改善させる治療薬の開発へとステップアップしていく可能性もあろうかと思います。

最後に、アルツハイマー型認知症治療の分野で、田中さんが有望と考える銘柄をお教えいただけますか?

 新薬が当たれば、大きなリターンが得られる分野です。フェーズⅢの結果が待たれるエーザイ、日本イーライリリーに期待したいです。中外製薬も、ロシュのガンテネルマブの国内販売権を保有しています。

 また、治療薬ではありませんが、注目したいのがアミロイドβの血中濃度を調べる測定試薬です。2021年にH.U.グループホールディングス傘下の富士レビオが製造販売承認を受けていますが、エーザイとシスメックスが共同で、さらに島津製作所も、開発に取り組んでいます。こうした試薬・診断方法が普及すれば、健康診断などで採取した血液から、将来アルツハイマー型認知症になるリスクを診断することが可能になります。アミロイドPETとの併用で、早期に発見される人が増えれば、治療薬の開発にもプラスに働きます。

(タイトル部のImage:jamesteohart -stock.adobe.com)