なぜ子宮内フローラの状態がよくないと妊娠しにくいのか

 子宮内フローラ検査を受けた人はすでに8000人以上。検査結果は不妊に悩む患者の治療に活かされると同時に、貴重な学術データにもなる。バリノスでは現在、不妊治療の専門家との共同研究にも熱心に取り組む。不妊治療専門クリニックのほか、東京大学や日本医科大学などの大学病院との共同研究も進行中だ。共同研究の結果はすでに3報の論文として報告された。どんなことがわかったのか。

 「日本人女性の子宮内フローラの実態が明らかになった。日本人女性も欧米の女性と同様、子宮内には善玉菌のラクトバチルス菌が多い。ただし、不妊で治療を受けている女性ではこの菌が少ない傾向がある。またラクトバチルス菌が優勢かどうかは、子宮内と膣内ではほぼ同じということもわかった」と長井氏。なお、少数の女性ではラクトバチルス菌ではなく、ビフィズス菌が子宮内で優勢だったこともわかったという。

不妊治療を受けている102人と健常者7人を対象に子宮内と膣内の細菌を調べた。不妊治療を受けている女性では、子宮内及び膣内のラクトバチルス菌が減少していることがわかった(グラフは子宮 内のデータ)。京野アートクリニックとの共同研究。この共著論文は日本生殖医学会のReproductive Medicine and Biology誌においてトップダウンロード論文に選ばれたという。子宮内フローラに対する関心の高さが伺われる(図:Reprod Med Biol. 2018; 1-10を基にBeyond Healthが作成)

 それにしても、なぜ子宮内フローラの状態がよくないと妊娠しにくくなるのだろうか。桜庭氏は「鍵になるのは免疫」だとして、次のように推測する。

「そもそも受精卵は母体にとっては異物。その受精卵を免疫寛容によって受け入れることで、妊娠出産が成立する。ところが、子宮内に病原性の菌が存在していたら、どうなるか。その菌を排除しようとして子宮内膜での免疫が活性化し、受精卵の着床まで妨げてしまう。仮に着床したとしても、妊娠の継続が難しくなる。子宮内はラクトバチルス菌という善玉菌が優勢なことで、悪玉菌を寄せ付けないようにし、妊娠出産に適した子宮内環境を保っていると考えられる」

遠隔診療用の検査キットも
膣から検体を採取する方法は簡便なため、患者本人が自宅で検体を採取してバリノスに送る方法もある。この場合は、専用のキットを使って子宮ではなく腟の検体を採取する。検査結果については、遠隔診療で医師から患者に説明がなされる(写真:稲垣 純也)