国際連携でデータを集める

 原因を突き止める研究を成功させるには、大きく2つの壁を越える必要がある。いかにデータを効率的に蓄積し、その病気との関連性について関連データと突き合わせながら速やかに解明していくかが重要。

 一つの壁は、データの不足。遺伝性疾患は希少性のために、国内だけでは、十分なデータを集められない。ゲノムのデータだけあっても足りない。ある病気を調べたときに、関係ありそうな遺伝子は次々と見つかってきても、そのうちどれが病気との関連性が深いのか、病気の人の持つゲノムデータ以外のデータが欠かせない。世界ともつながり、病気の情報を集約していく必要がある。松本氏は、「一研究室でできなかったことを、世界中の研究者・医師が寄り集まり調べていく。現実的には競争もあるのだが、一方で協力をしながら、お互いの得意と不得意の分野を踏まえて補い合う」と説明する。

 日本では「IRUD(未診断疾患イニシアチブ、アイラド)」と呼ばれるプロジェクトが進められている。2015年から始まったもので、全国から原因の分からない疾患を、IRUD拠点病院に集めて、専門のIRUD解析センターでまとめて解析する体制。遺伝子をコードしているDNA全体を読む「エクソーム解析」で謎を解いていく。

 さらなる壁はテクノロジーの進化をいかに取り入れるか。松本氏によると、エクソーム解析によって3割ほどは解決できる。さらに、遺伝子領域だけでなくゲノム全体を対象とした全ゲノム解析も可能である。またこれまではゲノムDNA鎖を100~250塩基の細切れで読み取るショートリードの「短鎖シーケンサー」が主流だったが、今後は1万塩基を超える長い鎖を一度に読める、ロングリードに対応した「長鎖シーケンサー」を駆使した解析も必要になる。

 松本氏は、「ニューテクノロジーであったNGSで解析しているが、ショートリードでは限界もある。全ゲノムを読み、ロングリードなども用いて新しい発見をしていく。分かる部分を3割からどれくらい高めていけるかが勝負だ」と説明する。ゲノムデータと他の様々なデータとリンクさせて、病気の改善につながるヒントを浮かび上がらせていくことが重要になる。そういう意味では、ゲノムデータを持つ人が増えて、関連のデータも含めた情報が蓄積するほどに有利。松本氏はゲノム解析をほぼ全員が行う日も近いとみる。