大胆な仕組みで世界を変える

 国全体でも従来の常識に挑戦する必要はあるかもしれない。

 例えば、一つは、検査の効率的な運用を追求すること。米国では「CLIA」と呼ばれる検査室の認証制度を設ける。CLIA認証を受けた検査室は遺伝子検査の新しい項目の検査について速やかに対応し、医療現場へ新しい項目の検査を提供できる。日本ではそうした仕組みがない。さらに、日本の研究レベルの解析拠点は、未解明の疾患を研究しつつ、確立された疾患の遺伝子検査も引き受けてきた状況となっており負荷が大きかった。

 もう一つは、日本の国民皆保険との折り合いをいかに付けるかも課題。研究として進められてきた難病医療をいかに通常の医療に組み込んでいくかだ。

 「難病は公的助成があるじゃないか」と言われるかもしれないが、経済的な基盤は脆弱だ。難病の医療は、日本では1960年代にスモンという病気の原因を探索するところから研究が本格化している。1956年に設立された日本人類遺伝学会のメンバーも積極的に希少疾患の研究を進めてきた。1974年、56疾患が特定疾患治療研究事業の対象となり、公的助成で患者は治療を受けられるようになった。2015年に難病法が成立し、消費税などの財源が充てられた。指定難病は333疾患に増え、指定難病患者は90万人規模に。医療費助成の規模は年間2000億円を超えた。

 全ゲノム解析はカギを握るとみられる。今は公的助成で難病の医療ではゲノム解析が行われるが、ゲノムデータを取ること自体が、他の病気も含めて当たり前になれば、状況は変わるのかもしれない。海外では、米国の民間保険であるガイジンガー保険が、基本的な検査にシークエンス検査を位置づけると発表している。経済的な裏付けをもって、ゲノムデータをうまく通常の医療で活かしていけるかがこれからの医療の質を左右するかもしれない。

 さらには、情報処理の体制をいかに作るかも課題になる。解析のためのデータ処理の体制整備なども必要だ。現在では、医療機関ごとにデータを保管するサーバーを整備しているが、ネットワークにつながるクラウドサーバーの活用も視野に入れる必要もある。そこでは当然セキュリティーや悪用の問題を考える必要もある。

 こうした体制の改善を続けていき、難病の医療の効率化が求められている。難病に限らず、がんやその他の疾患も含めた総合的な発想転換がなければ難しいのだろう。