介護事業者は売り上げの3%を人材投資に回す、そんな制度化も

 次に、(2)のヘルスケアサービスの従事者・プロバイダー向けのエンパワーですが、医療にせよ介護にせよ、これだけ保険財政が厳しくて人手も不足している状況では、そこで働く人たちの能力を目一杯発揮していただくと同時に、機能をもっと進化させていくことが欠かせません。その意味で、医師の業務を他の医療職に移すタスクシフティングはぜひ推進するべきです。

(写真:荒川 修造、以下同)

 例えば、米国には「ナースプラクティショナー」(NP)と呼ばれる看護師たちがいます。医師の指示がなくても一定の診断や治療、薬の処方を行うことが認められていて、医師と看護師の中間にあるような存在です。米国でNPの存在はごく一般的で、NPがまず患者と接して対処するというのが非常に徹底されています。それで医師の負担が減り、医師でしかなしえない業務に集中できるようになっています。一方、日本では医師不足などを背景にNPの制度化を求める声は高まりつつも、実現には至っていません。ですが、日本でも医療界を進化させる方策として看護師の役割をもっと広げることも議論すべきでしょう。

 役割の見直しは薬剤師も必要です。6年の教育を受けて医学的な知識も一定程度あるのにひたすら調剤しているのは本当にもったいない。

 私は以前、フィンランドの薬局を見てきたのですが、そこで働く薬剤師は約9割の時間を顧客へのカウンセリングや教育に使っていました。ブースの中で、薬のこと以外にも様々な生活面の相談に応じているんですね。投薬については、欧米では小包装製品の「箱出し調剤」が主流なので手間はかからず残り1割程度の時間で済むわけです。ほかにも地域住民への健康教育に熱心で、公衆衛生分野の活動に力を入れているのが印象的でした。そういったことを日本の薬局薬剤師もやるべきです。すると患者や市民のエンパワーにもつながるメリットがあります。

 このほか、介護従事者へのエンパワーも欠かせません。慢性的な人材不足が続く介護業界ですが、その最大の要因は、そこで働きたい、働き続けたいと思わせる魅力に欠けている点だと感じています。魅力あふれた職場であるためには、介護職が成長できてキャリを築ける環境を整えることが重要です。

 ですので、例えば、介護事業者は売り上げの3%を必ず人材投資に回すことを制度化してしまうという方法もあるでしょう。今は人材を使い捨てる業界だとのイメージがまだまだ強いので、そういうルールを入れて必ず人材を育成する産業だという風に変えていかないと。フランスはこうしたやり方を既に法制化しています。