社会保障費の数%の見直しで十分

 社会保障給付費は本来社会保険料およびその運用の70兆円余りで支払われるべきですが、総和としては見ると120兆円ほどあり、45兆円余りを補填しなければいけない状況です。これが上の補填の30数兆円と、地方交付金の大半に当たります。

 QOLを守りつつも社会保障費用の全体の増大を抑制することで未来のために必要な額を捻出し、未来の世代、この社会の未来のために張らなくてはならないという見解です。

どんな解決策が考えられますか。

 解決策以前に、まずは一体何にどのぐらい必要なのかを整理する必要があります。私の計算では年間数兆円、社会保障給付費の2~3%あれば十分です。社会保障費を半分にしろというような話ではありません。詳しくは今度出す新著『シン・ニホン』(NewsPicksパブリッシング)をご覧ください。

 次に、そもそもちゃんと未来にリソースを張るんだ、我々はこれからの世代のために残すに値する未来を残すのだ、我々は座して滅びはしないということを社会全体として決意する。言葉だけとか上っ面だけでなく、リソース配分を見直すことを本当に決意し、時間的、量的なターゲットも含めて明確に打ち出すことです。

 その上で、QOLを極力下げない形であらゆる知恵を絞って数%の社会保障費の見直しを行う。このぐらいの見直しはあらゆる経営で行うことなので、優秀な政治家や霞が関の人たちならいくらでもアイデアを出せるのではないでしょうか。私のような部外者が知恵を出す必要があるようなことだとは正直思えないです。

はい。が、なにか頭出しだけでもお聞きできると。

 普通に考えられることをいくつか述べたいと思います。知恵の問題ではありませんが……。

 第一にデータドリブンにどこに改善余力があるかを見極めるべきです。例えば、国立情報学研究所長であり、東京大学生産技術研究所教授でもある喜連川優先生の研究室で構築された日本の全ての「レセプト情報・特定健診情報」を解析できるプラットフォームを用いて、自治医大、医療経済研究機構らのチームが解析したところ、年間約9000万件の抗菌薬(抗生物質)の処方のうち、半分以上が通常は抗菌薬が不要な感染症に処方されていることが分かり最近発表されました。その上、抗菌薬が必要なケースにおいても、薬剤耐性菌が出やすい不必要に抗菌スペクトルが広いものが処方されていることが明らかになっています。これだけで恐らく年間数千億の改善余地があると推定されます。このようにデータに基づいて、まとまった無駄を1つずつあぶり出し、それを解決していくことを徹底すべきです。

* Hashimoto H. et.al, “Indications and classes of outpatient antibiotic prescriptions in Japan: A descriptive study using the national database of electronic health insurance claims, 2012–2015” International Journal of Infectious Diseases 91 (2020) 1–8

 第二に現在の富の生まれ方の変化に沿った社会全体のリソース再配分の仕組みを埋め込むことです。

 この10年余り、世界的に富の創出はGDP(国内総生産)、すなわち付加価値の総和ではなく、新しい事業を生み出したり、イノベーションを引き起こすことで生まれる株式などの資本からの創出が中心になってきています。例えば、日本の場合、2008年から2018年の間GDPは確かに増えていませんが、企業価値の総和は1.7倍に増えています。単なる事業スケールから富が生まれる時代は終わりつつあるのです。留意事項としては、これらのマーケットキャップ(market capitalization:企業価値)的な富は通常の方法では一切課税されませんし、する方法もないということです。