介護現場が世界戦略を支える舞台に

 ほぼ1年間になるが、最初は介護現場で体操をしたり歌を歌ったりして、インド人も面食らうこともあったようだ。1カ月程度経つと、持ち前の性格の明るさから日本の介護現場にも慣れて、むしろ自分からデイサービスの提案をする動きも出てきた。例えば、高齢者への英会話教室。言葉を学ぶことで脳の活性化につながり、認知症予防にもつながると期待された。インドの中でも東北地方出身者はもともと日本人と風貌が近いなどあるが、人種の差はある。しかし、そうした違いも徐々に無関係に。「インド人看護師のコミュニケーションは円滑。『インドに帰れ』などと言われたときに、『一緒に帰りましょう』などとうまく返して笑いに変える。高齢者とのやりとりはうまいと感じている。施設でのイベントも初めはなじめないところもあったようだが、むしろ積極的に参加するようになっている」と、大木氏はインド人看護師の印象を語る。

 紹介を受けた施設は監理団体に対して120万円を支払い、日本語研修や入国手続きの手数料などのための経費や管理費を支払う。NAVISはそこから収益を得る。技術実習に入ってからは、施設はインド人の技術実習生に月20万円程度の給与を支払う。インドの実習生は本国に仕送りもできる。施設にとっては人手不足の解消になり、実習生の学びや金銭的なインセンティブにつながる。「Win-Winの関係になっている」とサンバンダム氏は説明する。

 NAVISはこうした日本での技術実習の事業を、「MEGURU(メグル)」と呼ぶ戦略の中に位置づけている。今後、高齢化が進む欧米など日本以外への同様な紹介事業の展開を進めようとしているのだ。日本の介護現場で技術実習を受けた看護師をさらに世界に紹介する形も模索する。いわば、日本の医療現場が人材育成の拠点となっていることになる。NAVISは世界の医療現場を支える人材のハブをインドに作り上げようとしている。

 日本の内側から見ると、介護現場は人手不足が深刻で、担い手の確保が難しい分野。それがインドから見れば、全く違った価値を生み出しているというわけだ。インド人の強みである言語能力を組み合わせることで、世界戦略を支える重要な舞台に変身する。

(写真:飯塚 寛之)

 さらに言えば、NAVISの掲げているMEGURU戦略は看護師だけにとどまる話ではないのかもしれない。今後、幅広いヘルスケア人材がインドから紹介されてくる方向になる可能性はある。ヘルスケア人材の世界展開という視点は、国内の需要だけを見ていてはなかなか見えてはこない。そこにはやはりディスラプティブイノベーションの一つの形がある。

 続いて次回は、運輸企業がインドで進める新たな物流インフラ事業の動きを見ていく。

■変更履歴
記事初出時、「既に50人近くの看護師を日本の施設に介護人材として紹介している。」とあったのは「既に30人近くの看護師を日本の施設に介護人材として紹介している。」でした。また、「施設はインド人の技術実習生に月11万~18万円程度の給与を支払う。」とあったのは「施設はインド人の技術実習生に月20万円程度の給与を支払う。」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。

(タイトル部のImage:quickshooting -stock.adobe.com)