前回は、インドで医療器材のデータベースを構築し、それを足がかりに州政府とともにヘルスケア物流インフラを整備しようとする日本の老舗物流企業の動きを取り上げた。続いてリポートするのは、インドに乗り込み、健康問題の解決を図るNEC。その鍵を握るのが、同社が州政府と協業してトレーニングする現地の女性たちだ。NECコーポレート事業開発本部マネージャーで、インドでの事業リーダーを務める安川展之氏と、そのチームメンバーに話を聞いた。

 「こんにちは。健康診断に伺いました。身長や体重などを測ります」──。今年の2月から、インド北部・ビハール州でヘルスワーカーと呼ばれる女性たちが農村部の家々を訪問して、健康診断を行う活動を進めている。約5000人の市民を対象とした健康診断の実証試験を進めるのは、日本の情報通信大手であるNECだ。

人々の自宅に出向いてタブレット端末を使いながら健康診断を行うヘルスワーカー(写真:NEC)

 インド政府は2018年に「アユシュマン・バラット(長寿化インド)」と呼ばれる計画を掲げて、ヘルスケア関連の政策に力を入れている。日本政府は同年に協力覚書を交わし、ヘルスケア分野での協力関係を強化。そうした背景の下、インドにおいては、先進国と同じように、増加が顕著になりつつある糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防に関心を高めていた。社会保障費の増大を押しとどめたい州政府のニーズに応えたのがNECだった。

 インドでは、日本のように医療が身近な存在ではなく、一般の人々の健康への関心も高くはないのが課題だ。健康保険が日本のように使えず、とりわけ農村部では医療機関が物理的にも遠い。インドでは、「サブセンター」と呼ばれる一般の民家のような外見の施設にヘルスワーカーの女性らがおり、市民の健康維持のために活動している。NECでは、そうした女性たちがむしろ自ら人々の元に出向いていく「訪問型の健康診断」を提供するというアイデアを実行に移している。