生活のモニタリングデータを診察に生かす

 IoTデバイスを用いた日々のモニタリングデータを用いた診療が円滑になる――これも、5Gへの期待として挙げられる点だ。

 「生活の中で取得する情報は非常に有効。進化したウエアラブルデバイスなどで取得したさまざまなモニタリングデータの活用は、確実に臨床上のより良い医療の提供につながる」。そう指摘するのは、慶応應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室の岸本泰士郎氏。特に精神科医療では、心拍変異などの生理学データ、身体活動、睡眠などのデータを評価して診療に役立てることが重要だという。

慶応應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室の岸本氏(写真:オンライン取材のキャプチャー)

 岸本氏らは、こうしたデータを精神科領域の視点で客観的に評価し、遠隔精神科医療に生かそうと、ウエアラブルデバイスや機械学習を用いた診断支援技術開発のプロジェクトを推進している。「PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)」と呼ばれるプロジェクトだ。

 PROMPTでは現在、診察場面における患者の声の調子、体動、表情をカメラやマイクで収集・定量化している。合わせてウエアラブルデバイスによる睡眠や活動量など日常生活をモニタリングしたデータを利用する。これらのデータをクラウドに送り、機械学習を用いて解析し、診察室にリアルタイムにフィードバックして診察に生かす仕組みである。FRONTEOヘルスケアや日本マイクロソフト、オムロンなど7社が参画する産学連携プロジェクトである。

PROMPT研究開発のイメージ(図:PROMPTの資料を基にBeyond Healthが作成)

 将来的には、診察場面で収集しているデータの部分を、オンライン(遠隔)にしていくという。「4Gでは映像の乱れや遅延などがあり、オンラインでは正確な定量化・解析が難しい。5G環境ならオンライン診療で利用でき、症状変化を患者と評価しながら診察に役立てられるだろう」と岸本氏は期待する。