5Gによる共通デジタル基盤の上で医療が進化する

 「5Gの世界は、オンライン診療が2次元の世界から拡張される」――。こう説くのは、眼科医でデジタルハリウッド大学大学院 客員教授の加藤浩晃氏だ。

デジタルハリウッド大学大学院 客員教授の加藤氏

 現在のオンラインによる視診は、画面を通して患者を2次元でしかとらえられない。視覚的な情報量が限定される上、基本的に患者からの症状を聞きながら対応することが多く、一方向の情報に基づいたものになっていると加藤氏は指摘する。「患者の外観をくまなく観察していろいろな視点で疑わしい点を見つけられることが視診の本質だと考えている。現状のオンライン診療と実際の対面による視診との大きな違いはここにある」(同氏)。

 こうした課題を解決しうるのが、「遠隔ホログラム診療」である。MR(Mixed Reality:複合現実)などとの連動により、患者を立体画像で映し出してオンライン診療を行う方法だ。5Gの普及によって、こうした大容量の通信が発生するケースも実現しやすくなる。

 加藤氏は「患者を立体的に観察できれば、対面診療に近い視診が可能になるだろう」と見る。患者は、自らが訴えたこと以上に医師が病態を見つけ、対処してくれることが受診の満足感だと考えていると同氏は指摘。その実現に近づけるのが5Gだと位置付ける。

 ただし、2次元のオンライン診療を拡張するのは5Gへの期待の一例であって、社会・医療全体が一つのデジタル基盤の上に形づくられることが5Gの世界の本質だと加藤氏は強調する。「これまでは医療機関や治療法、あるいは日常の健康情報の記録など、それぞれのドメインでデジタル化が徐々に進んできた。今後はそれらを包含する5Gによるデジタル基盤の上で進化する」(同氏)。

 それが実現すると、医療機関同士の情報連携は容易になり、同時に医療機関と患者もつながりやすくなる。「外来に患者が来ない社会が訪れるかもしれない」と加藤氏は展望した。


(タイトル部のImage:Beyond Health)