Beyond Healthは、「健康で幸福な人生100年時代を可能にする」社会の実現に向けたビジョン「空間×ヘルスケア 2030」を提案し、それを具現化するための新プロジェクト「ビジョナリー・フラッグ・プロジェクト(VFP)」を立ち上げた(関連記事:目指すは「空間×ヘルスケア」の社会実装)。

空間×ヘルスケア 2030の一つとしてBeyond Healthが描く、未来の住宅「Beyond Home」。これに関連してくる住宅の温熱環境について、「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」第5回報告会で示された最新の知見を前編に続き、紹介する。

 「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」の第5回報告会は2021年1月26日、ウェビナー方式で行われた。断熱改修の前後における居住者の健康状態を調査・分析する研究で、慶応義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授を中心とした研究グループが14年から続けている。前編では室温と血圧に関する最新の医学的エビデンスを紹介したが、後編では、それ以外の分析結果をお届けする。

 今回の報告会では、「過活動膀胱(ぼうこう)」についても知見が示された。過活動膀胱とは、尿意切迫感を症状とし、頻尿症状を併発する症候群。40歳以上の日本人の約12.4%が有病であるとされている。

 過活動膀胱症状がある被験者ら(症状あり群)と、症状のない被験者ら(症状なし群)の就寝前の室温と就寝中の寝室の室温を比較したところ、症状あり群の就寝前の居間の室温が、症状なし群に比べて約1℃低いことが分った。就寝中の室温については症状の有無による大きな差がみられず、過活動膀胱への影響は就寝中ではなく、就寝前の温熱環境の方が大きいと考えられる(下図左)。

 過活動膀胱に影響する、具体的な室温についても分析が進んでいる。研究グループによる分析では、就寝前の居間の室温が18℃を下回ると、過活動膀胱の発症リスク(オッズ比)が高まることがわかった。

 室温15℃以上18℃未満は1.23倍、同12℃以上15℃未満は1.29倍、12℃未満は1.44倍と、室温が低くなるにつれてリスクは高くなる(下図右)。研究グループは、「常に寒い住環境にある居住者ほど、過活動膀胱を発症するリスクが高い」と結論づけた。

過活動膀胱と室温の因果関係について調査・分析した。就寝中の室温より、就寝前の温熱環境の方が重要であるとの結果があらわれた。就寝前の室温が12℃未満の場合、過活動膀胱のリスクは約1.4倍になる(出所:日本サステナブル建築協会「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第5回報告会」資料)