こうしてオーガマンは誕生した

 そんな大賀社長自身は薬剤師ではない。「登録販売業者の資格は持っているが」と前置きした上で、こんな懸念を口にした。

 「一般の人から見ると、薬剤師と登録販売業者の区別がつかない、違いがわかららないというケースも少なくない。両方、同じように白衣を着ていて、名札には職種が書いてあっても、そこまで見ていなかったり、見ても特段気に留めていなかったりする」

 薬剤師と登録販売業者では知識の量が断然違うことは自らがよくわかっている。「比べ物にならない」と大賀社長。にもかかわらず、一緒くたにされがちなのは、「薬剤師の存在意義・存在価値が世間に広く知られていないため」。そんな発想から生まれたのが、薬剤師のヒーロー、その名も「薬剤戦師オーガマン」だった。

薬剤戦師オーガマン(画像提供:大賀薬局)
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薬剤戦師オーガマン(画像提供:大賀薬局)
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薬剤戦師オーガマン(画像提供:大賀薬局)

 オーガマンとは何者なのか。構想から3年の2019年夏に誕生。同年10月に動画投稿サイト、ユーチューブにプロモーション動画が公開されると、SNSを中心に話題を集め、いまや人気は全国区だ。

 そのプロモーション動画はこちら

 食事を終えた老夫婦の男性が、今日は具合がいいから大丈夫だとして薬を飲まずに横になった途端、オーガマンが現れる。場面は移り、薬局で調剤を終えたオーガマンが患者に「やくいくてちょう(薬育手帳)」を渡す。だが、それを奪い取る敵が現れ、助けに向かうオーガマン。注射器のような武器で敵を撃退し、勝利をおさめると、子どもたちが集まり、オーガマンは一人ひとりに手帳を渡す。それを大切に家に持ち帰った男の子の祖父が冒頭の老夫婦の男性だった。手帳を手にした孫から「お薬を残さずに飲んでね」と伝えられた祖父は以前の態度を一変させ、笑顔でうなずく──。こんなストーリーだ。

 爆破やCGも駆使した戦闘シーン。後半流れるロック調のテーマソングが何とも印象的でくせになる。

 「もともと大の仮面ライダーファンだった」と打ち明ける大賀社長。2016年にやっていた仮面ライダーエグゼイドはゲーム好きでもある医師が変身した。ん? 医師のヒーローはいても薬剤師のヒーローはいない。そのことに気づいた大賀社長は、子どもたちの憧れの的となるヒーローを通じて「薬剤師という職業を知ってもらうきっかけになれば」との思いから、「薬剤戦師オーガマン」を着想した。

 “デビュー”まで3年かかったのは、細部の詰めに時間をかけたため。福岡で映像・イベント会社を経営する中高時代の後輩の協力も仰ぎながら、オーガマンの背景やスペック、デザインの設定にこだわり抜いた。

 最も力を注いだのは、「ヒーローならではの大義づけ」と大賀社長。「ヒーローは“ゆるキャラ”ではない。どんな敵と戦って何を守ろうとしているのかの大義が欠かせない」。

 では薬剤師は日々何と戦っているのか。薬剤師の重要な役割として、薬漬け医療や過剰投与のチェック機能がある。処方箋を点検し、飲み合わせや本当に飲み切れるかを考え、医師に薬を変えたり、減らしてもらったりする。問題ない処方であれば、患者に正しく服用してもらい、治療効果を高めていく。こうして薬が必要なくなる状況へと導き、結果的に医療費の削減にも寄与する。

 だが、現実は患者が治ったと勝手に判断して飲むのをやめたり、飲み忘れたりする「残薬問題」が発生。飲まれずに廃棄される薬は年間約500億円に上るとも言われる。本来、残さずに飲めば、効力が高まり、結果的に薬の量が減らせるはず。そこで、オーガマンの使命は、病状の悪化や医療費の無駄遣いにつながる残薬問題の撲滅とした。同時に病気予防の大切さも伝えていく。

 「薬飲んで、寝ろ」──。決め台詞は至ってシンプルなワンフレーズにした。