オフィスビルにもESGの波

2030年に向け、大村さんは、オフィスビルはどのように変わっていくと見ていますか?

 1つ目は設備の変化です。5Gのネットワーク環境の構築など、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応は急務です。こうした設備に優れる物件は業容を拡大しているIT系企業からの引きも強く、賃料が上がっていくのではないかと思います。

 2つ目は開発の変化。オフィス縮小の進展は別として、分散化による用途の多様化が進めば、ホールやレジデンシャル部分のある大規模再開発が加速することも考えられます。このクラスだと、REITが施設全体を買うことは難しく、区分所有という形で保有することになるでしょう。

 3つ目は評価の変化。投資の世界ではESG投資が拡大しており、投資に当たり、企業のE(環境)、S(社会)、G(企業統治)の取り組みを重視する機運が高まっています。ESG投資は、今後はオフィスビルの評価への適用が見込まれ、ヘルスケアも注目されるテーマの1つとなることでしょう。

どういうことでしょう?

 例えばESGの「E( Environment)」の評価軸として、温室効果ガス対策があります。温室効果ガスの取り組みを企業の投資判断に役立てようとするわけですが、これはオフィスビルにとっても重要なテーマで、海外では環境に配慮したビルの家賃が上昇しているという論文があります。いわゆる「グリーンプレミアム」です。一方、これとは逆に、ESG対応を怠った物件からテナントが流出してしまう現象も起きており、こちらは「ブラウンディスカウント」と呼ばれます。

 ヘルスケアを「社員の健康」と読めば、ESG投資の「S(Social)」の部分に当てはまります。ESG投資がさらに浸透すれば、「社員の健康に資する施設」という視点でオフィスビルを評価する機運も高まるのではないでしょうか。企業の「健康経営」による評価は、既に始まっていると言えますが、オフィスビルはこれからといった段階です。評価のポイントとして、どのようなコンセンサスが生まれるのか、注目して見ています。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)