薬局への開設が決定するも周知活動に苦慮

 「気軽に立ち寄れる街中の場所を」と考えて声をかけたのが、以前から交流もあり、地域に根差した健康啓発活動にも力を入れている薬局チェーンのクスリのマルエだった。

 クスリのマルエは群馬県を中心に17店舗の調剤薬局やドラッグストアを経営し、地域の健康向上に貢献することを理念に掲げて事業を展開している。執行役員調剤事業本部本部長で薬剤師の鈴木暁子さんは参画の思いを次のように語る。

 「当社の地域活動は、これまで健康に関心が高く、薬局を利用することの多い高齢者層をターゲットに行っており、“健康知識のない若者”に向けた活動にはあまり取り組んでいませんでした。しかし、スウェーデンのユースクリニックの話を聞いて、若者が気軽に健康について相談できる場所をつくることの必要性を理解できました。また、処方せんがなくても気軽に立ち寄って相談できる場所として薬局を知ってもらうよい機会になればと考えました」(鈴木さん)。

 ユースクリニックの開設場所は、若者の立ち寄りやすさを考慮して若者に人気の商業施設があり、駅からも歩いて行けるドラッグストア併設のマルエドラッグ高崎駅西口店に決まった。

 苦労したのはユースクリニックという概念がない日本で、若者たちに体や性などのちょっとした悩みを相談できる信頼できる場所があることをどう知らせるか、だった。

 「ユースクリニックの存在を中高生に広く、効率的に伝えるには、学校でチラシを配ってもらうのがいちばん確実だと考えました」(福田さん)。

 群馬県、前橋市、高崎市の教育委員会の門を叩き、同意を得られた高崎市では中学校と高校へのチラシ配布に成功。だが、前橋市については、開催場所が高崎市だったこともあり、当初、協力してもらえなかった。そこで、前橋市の中学校と高校にチラシ配布の依頼電話を1校ずつかけていくローラー作戦を展開。その結果、前橋市では10校以上の学校にチラシを配ってもらうことができたという。

 ただ、依頼の過程で、福田さんや鈴木さんらは活動の必要性と重要性を再認識させられることになった。

 「現場にいる養護教諭の先生からは、『生理や性の問題を伝える必要性はわかっているけれど、学校ではなかなか取り組みにくいテーマだから困っていた。ユースクリニックがあるとありがたい。ぜひ協力させてください』という声が多かった。にもかかわらず、『性に関する話題は子どもに無用な刺激を与える』などの保護者からの反応を懸念され、チラシを配布できなかった学校もありました。性の問題こそオープンに語り合えるようにしなければ、子どもたちに正しい知識は伝わらないと痛感しました」(鈴木さん)。