遠隔勤務やワ―ケーションも働き方の選択肢に

 場所や時間にとらわれない働き方で、問われるのは自律性である。社員の自律性は、どのようにして醸成すればよいのだろう──。

 「そこで必要になるとよく言われるのは、成果主義の徹底だ。自律的な働き方を認めるなら、仕事の成果を基に評価するしかないという考え方がある。しかし富士通の考え方は、全く異なる」。平松氏は口調を強める。

 何がどう異なるのか。富士通が重視するのは、会社と社員の信頼関係だと言う。「会社の目的、価値観、ビジョン、そうしたものに社員が共感し、信頼関係を築けて、初めて仕事を任せることができるようになる」

 上司が細かく管理するのではなく、部下を信頼し安心して任せる。その前提には、組織が向かう方向や重んじる価値を共有していることが欠かせない。「オンラインが常態化する中、そうした関係を築くためのコミュニケーションの大切さを改めて痛感している」

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 とはいえ、立ち止まる時間はない。富士通にとり、社員の自律性の醸成と働き方の多様化は、車の両輪のようなもの。そして、働き方の多様化はさらに広がりを見せている。

 2021年3月、富士通は大分県との間で相互の連携・協力を通じた持続可能な地域社会の構築を目指し、包括協定を結んだ。連携・協力の対象分野としては、「遠隔勤務を活用した移住による地方創生」「ワ―ケーション推進による関係人口の創出」「多様な知見・スキルを活用した地域課題の解決」の3つを掲げる。これにより、遠隔勤務やワーケーションも多様な働き方の選択肢となる。

 平松氏は「これらの取り組みは社員のウエルビーイングやエンゲージメントの向上にもつながる。もっと多様な働き方に挑戦したい、さらにクリエイティビティーを発揮したい、そう望む社員とは、Win-Winの関係を築ける」とメリットを強調する。

 新型コロナウイルスの国内感染者数が第4波を迎えようとする今、ニューノーマルを語りにくい状況にはあるが、今後、後戻りはあり得ない、と平松氏は言い切る。

 「満員電車に揺られ、例え台風でも大雪でもオフィスにさえ来ていれば仕事している、とみなされる状況はおかしいし、リスクマネジメント上も好ましくない。ダイバーシティやワークライフバランスを考えても、確実に今のほうが望ましい」

 平松氏は今取り組むオフィス改革の先に、カルチャーチェンジを見据えている。「今後は、上司と部下の信頼関係の構築に向けたコミュニケーションが非常に重要になる。『1on1』のコミュニケーション、教育、評価などの仕組みを総動員しながら、社員の自律度を上げていくことに努めていく」。社員の自律度アップに向けた富士通の挑戦は続く。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)