50年杉と100年杉に差があるか

 内装木質化に使う木材の樹齢にまで踏み込んで検証した事例もある。畦地製材所(三重県尾鷲市)が行った「100年杉の効果の実証」実験だ。

 樹齢100年相当のスギから得たブランドスギ材「100年杉」と、樹齢50年ほどの「50年杉」、そして化粧板を使った一般的な複合フローリングの3種を床材に用いて、3棟の試験用の居室を用意。7人の被験者が各居室にそれぞれ34時間滞在して、滞在中の心理・身体面での影響を調べた。

畦地製材所の事例で用いられた検証用の施設。3棟の居室(左写真)の内部(右写真)には、「100年杉」「50年杉」「複合フローリング」の3種類の床材を施工した
畦地製材所の事例で用いられた検証用の施設。3棟の居室(左写真)の内部(右写真)には、「100年杉」「50年杉」「複合フローリング」の3種類の床材を施工した
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 検証方法として、被験者へのヒアリングのほか、身体各部位に取りつけた温度センサーによる定期的な皮膚表面温度測定、唾液中のアミラーゼ測定によるストレスチェックなどが行われた。

 皮膚表面の平均温度や足と頭の温度差、ヒアリングした被験者の体感においても、床材の違いによる明確な差異は確認できなかった。ただ、唾液アミラーゼについては、100年杉だけが大きく低減した結果を示した。

 これは100年杉フローリングに、ストレスの低減効果があった可能性を示唆するものだ。しかし一方で、50年杉や複合フローリングには目立った影響は現れていない。「樹齢を重ねた木材がストレスの軽減に寄与する」という仮説を採るならば、50年杉にも相応の唾液アミラーゼ減少の結果が確認されていなければならず、今回の結果では「樹齢を重ねた木材の効能」と考える仮説は成立しにくかった(下図)。

畦地製材所の事例の検証結果。左上は被験者ヒアリングの結果、右上は被験者の皮膚表面温度の平均、左下は頭部と足の温度差、右下が唾液中のアミラーゼ濃度
畦地製材所の事例の検証結果。左上は被験者ヒアリングの結果、右上は被験者の皮膚表面温度の平均、左下は頭部と足の温度差、右下が唾液中のアミラーゼ濃度
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 畦地製材所代表の畦地秀行氏は、この結果に対し「検証期間が短かった。100年杉だけにストレス軽減効果が確認された点を正しく評価するには、さらに長期間の検証と分析が必要だ」として結論を保留している。

 樹齢の異なるスギ材の性能を定量的に評価しようとするユニークな試みだったが、今回の実証実験においては、統計的な有意差は認められなかった。

 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の杉山真樹氏は、畦地製材所の事例について「審査の段階でも、樹齢による違いを観測するのは至難の業ではないかという意見が多かった」と話す。一見、実証が非常に困難な試みだと思われたが、他に例のない挑戦的な提案が評価された格好だ。今後の追跡調査や、より長期間の実証試験に期待がかかる。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

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