Beyond Healthは、「健康で幸福な人生100年時代を可能にする」社会の実現に向けたビジョン「空間×ヘルスケア 2030」を提案し、それを具現化するためのプロジェクト「ビジョナリー・フラッグ・プロジェクト(VFP)」を進めている(関連記事:目指すは「空間×ヘルスケア」の社会実装)。そのテーマの一つが、未来の薬局「Beyond Pharmacy」だ。

今回は2030年に実現しているべき「薬局」空間とそこで働く薬局薬剤師像について、以下の登壇者で議論した。

【座談会参加メンバー】
・佐藤 敏信氏(久留米大学特命教授/元厚生労働省健康局長)
・首藤 正一氏(日本保険薬局協会会長/アインホールディングス代表取締役専務)
・星 利佳氏(メディカ ほし薬局 代表取締役社長)
・森 和彦氏(日本製薬工業協会専務理事/元厚生労働省大臣官房審議官[医薬担当])
※氏名五十音順

(進行は日経BP 総合研究所 庄子育子、高橋博樹)

写真左から佐藤 敏信氏、首藤 正一氏、星 利佳氏、森 和彦氏(写真:花井 智子、以下同)

この10年間で薬局にどのような変化が起きるのか?

最初に2030年までの環境変化と薬局における実際の対応について伺います。2030年までに起きると予想される健康・医療ビジネスを取り巻く環境の変化をどうとらえるべきでしょうか。

佐藤 新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)が良い意味でデジタル化を推進しました。今後、人間にしかできないことだけを人間が担い、そうでないものは機械やコンピューターに任せる流れは一層進むはずです。

佐藤敏信(さとう・としのぶ)氏
久留米大学特命教授(医療政策担当)
日本医師会総合研究機構客員研究員
1983年山口大学医学部卒。同年に旧厚生省入省。大分県環境保健部健康対策課長、岩手県保健福祉部部長、厚生労働省雇用均等児童家庭局母子保健課長、厚生労働省医政局指導課長などを経て、2008年に厚生労働省保険局医療課長、2010年に環境省総合環境政策局環境保健部長、2013年に厚生労働省健康局長を歴任。2017年より久留米大学特命教授(現職)

 まず指摘したいのは、医療従事者の高齢化です。2018年の厚生労働省調査では、診療所で働く医師の平均年齢は60歳を超えており、年齢別の分布の山がどんどん後ろにずれて10年後にはどうなるかと思います。医師も人間ですから、いつまでも現役でいられるわけではない。つまり、患者に最も近い地域医療の現場ではますます人手不足が進むことになります。

 そうなれば地域医療を支える病院を中心にして地域の医療や介護、薬局のあり方も改善する必要が出てきます。今は同時に医療現場の働き方改革も進めなくてはならないので、さまざまな状況が大きく変化してきます。佐藤さんの言うように、デジタル化による業務効率化は必須です。COVID-19のパンデミックの中で社会のあらゆる場所でAIの活用も進みましたが、恐らくあと10年もせずに医療現場でもAIは相当利用されるようになるでしょう。

 現場を改革し、行動様式の転換を図るためにはその原資も不可欠です。現場を変えるための原資となる資金を国がどれだけ提供できるのか。今は医療費節減ばかりに目が向いていますが、将来への投資を怠ってしまえば医療が破綻しかねない危険な未来が待ち構えています。だからこそ、あるべき医療の全体像をデザインすることが急務と考えます。

森 和彦(もり・かずひこ)氏
日本製薬工業協会専務理事
1983年東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了、旧厚生省入省。医薬品医療機器審査センター審査第二部長、医薬品医療機器総合機構(PMDA)新薬審査第一部長、同審議役(新薬審査担当)を経て、2008年 厚生労働省医薬食品局安全対策課長、2014年厚生労働省医薬食品局審査管理課長。2015年8月に厚生労働省大臣官房審議官(医薬担当)に就任し、2019年12月退任。2020年10月より日本製薬工業協会専務理事(現職)