薬学部で学んで良かった――薬剤師の本来の姿とは

実際の薬剤師の反応は。

 現場では「そんなことを言われても…」という微妙な感じが残っています。薬を渡すまでが忙しすぎて薬歴を書くことすらできないのに、渡した後のフォローなど想像もできないと。一方で薬局経営者にこの話をすると、今の状態でそれをやったらうちの会社はパンクしてしまうと言う。つまり労務管理と採算性のバランスが取れていないんです。

 「フォローって何をすればいいんですか??」と半ば逆ギレのように聞かれることもありますが、いつも要点は3つだけと答えています。まず、薬を出した後にきちんと服用しているかどうかの確認、そして、きちんと効いているかどうかの確認、最後は副作用が出ているかどうかの確認です。

Beyond Healthが、2030年に実現しているべき空間を示した未来の旗印(Visionary Flag)のうち、「Beyond Pharmacy(未来の薬局)」を描いたもの。2030年、薬局は調剤だけでなく、ヒーリングやコミュニケーションの場となり、「空間×ヘルスケア」を実装した街のハブとしての役割を担う。詳細は「<a href="https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00030/060100002/" target="_blank">目指すは『空間×ヘルスケア』の社会実装</a>」参照(イラスト:kucci)
Beyond Healthが、2030年に実現しているべき空間を示した未来の旗印(Visionary Flag)のうち、「Beyond Pharmacy(未来の薬局)」を描いたもの。2030年、薬局は調剤だけでなく、ヒーリングやコミュニケーションの場となり、「空間×ヘルスケア」を実装した街のハブとしての役割を担う。詳細は「目指すは『空間×ヘルスケア』の社会実装」参照(イラスト:kucci)
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 薬が飲めていない理由は、錠剤が大きすぎるからかもしれない。もしくは飲んだら冷や汗が出て怖いからかもしれない。副作用が出たら何が原因で起きているのか。飲めない理由や飲みにくい理由を聞くと、患者がいろいろと教えてくれるのです。すなわち自分が調剤した処方の内容と患者の状態を見比べることで、自動的に薬剤師によるアセスメント(客観的な評価)が成立します。

 そうすると、「薬学部で学んで良かった」と思うはずです。実際にセミナーで聞くと「薬を渡すために薬学部で学んだわけではない。患者さんを良くしたいから薬剤師になった」という意見がほとんどです。薬を取りそろえ、渡すときに説明するだけだったら、極端な話、機械やインターネットでも用が足ります。しかし患者と向き合って服用の度合いを尋ね、効果を聞き、そこで薬を飲まない理由や副作用の原因がわかれば、医師にフィードバックする──それこそが本来の姿なのです。

薬剤師の対人業務を増やすにはどのようなサポートが必要になりますか。

 現場の薬剤師が多くの時間を取られているのは、薬学的専門度が極めて低い、あるいは必要とされないのに、業務的重要度が高い仕事です。最もわかりやすいのはお金にまつわる業務。例えば在庫管理、発注業務、在宅療養支援をやるのであれば契約業務などになります。

「Beyond Pharmacy(未来の薬局)」より、ヘルスケアマイスターのイメージ。未病改善のためのかかりつけ健康アドバイザーの役割を担う。詳細は「<a href="https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00030/060100002/" target="_blank">目指すは『空間×ヘルスケア』の社会実装</a>」参照(イラスト:kucci)
「Beyond Pharmacy(未来の薬局)」より、ヘルスケアマイスターのイメージ。未病改善のためのかかりつけ健康アドバイザーの役割を担う。詳細は「目指すは『空間×ヘルスケア』の社会実装」参照(イラスト:kucci)
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 これらを解決するためにも、薬局の経営者は薬剤師に時間と気力と体力を与える努力をすべきです。そこには3つの段階があります。

 第1段階は現在の業務フローを整理すること。この10年間で機械化が進み、今は枝葉が増えた木のようになっているので、あらためて見直すことが求められます。第2段階は、ICTなどを活用して合理化できる仕組みを思い切って導入すること。そして第3段階は、整理や合理化の末に見えてきた“必ずしも薬剤師がやらなくてもいい仕事”を非薬剤師のスタッフに任せることです。