「気づき」のためのツール

 3月30日にオンライン開催された「グリーン建築フォーラム第15回シンポジウム」では、このチェックリストの開発の背景や今後の活用方法などについて発表があった。

2021年3月30日に行われた「グリーン建築フォーラム第15回シンポジウム」の様子。チェックリストの概要と、開発の背景について様々な立場からの解説がなされた。プログラムの最後には慶應義塾大学の伊香賀俊治教授を司会に、講演者らによるパネルディスカッションを実施し、オフィスのウェルネスとニューノーマルへの展望について議論した

 まず開発の背景について、シンポジウムに登壇した、千葉大学の林立也准教授は「当初は今あるガイドラインや安全基準で用は足りるのではないかと考えていた。しかし、その多くは管理事業者や入居者側の視点に立った指針がほとんどで、ビルオーナーや設計・計画者の視点によるものはなかった。中長期的な視点に立った場合、これをフォローする必要があると考えた」と話す。冒頭でも言及したように、「アフターコロナの建物には、感染対策という性能が必要だ」との考えが、開発の背景にあったという。

 同様に登壇した、CSRデザイン環境投資顧問(東京都千代田区)の堀江隆一代表取締役社長は「米国では新型コロナの拡大以降、NYヤンキースタジアムやエンパイア・ステートビルなど、公共性の高い有名建築が次々とWELLの格付けを取得している」と解説。米国では、国際認証制度「WELL」がCOVID-19タスクフォースを創設し、2020年6月に「健康・安全性格付」を開始した。これは、建物や施設の健康・安全性を評価する制度だ。堀江氏は、近年の米国の動向として「健康や感染対策などの、いわゆるウェルネス分野の評価が建物の賃料などにも影響している」と指摘する。

 林氏は「今回のチェックリストは、ビルオーナーなど施設の供給側が感染対策をはじめとした取り組みを外部にアピールできるものとして開発した。米国と同じようにわが国でも今後、建築物にウェルネス分野の評価が必要になった際、公共性のあるガイドラインとして活用してもらうことを想定している」と話す。

 アピールに適した建築物のウェルネス評価としては、WELLや「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」など、評価基準や認定制度がすでに存在している。そのため、シンポジウムでは「WELLやCASBEEなど既存の評価基準や認定制度と、今回のチェックリストの違いは何か?」と聴講者から質問が挙がった。

 すると堀江氏は「今回のチェックリストはWELLの評価基準とおおむね重複した内容となっている。基本的な方向性は同じものだ」と返答。林氏も「CASBEEウェルネスオフィスとも、詳細は異なるがおおむね同じ。CASBEEなどの簡易版、または補完ツールと考えてもらいたい」と説明した。

 さらに林氏は、WELLやCASBEEなどの第三者認定機関の評価を得るにはコストと時間が掛かる点を指摘しつつ、「チェックリストはコストをかけず簡単に、感染対策をスコアリングできるものを目指した。今、必要とされているのは、すぐに実行可能な評価ツールだ」と、チェックリストが手軽に実践可能な点を強調した。

 これを受け、SDGsスマートウェルネスオフィス研究委員会委員長の村上周三氏は、チェックリストは、現時点においては認証事業に用いられず、あくまで「建物のウェルネス分野に対する『気づき』を誘発するためのツールと考えている」とまとめた。

 JSBCは現在、「住宅向けのチェックリスト」を開発中だ。今後は住宅やオフィスだけでなく、様々な建物用途への展開も視野に開発を進めていく。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

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経済産業大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官 兼 復興大臣政務官
参議院議員
佐藤 啓 氏
奈良県立医科大学
MBT(医学を基礎とするまちづくり)研究所 副所長(研究教授)
梅田 智広 氏
ほか

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