インバウンド激減で壊滅的打撃

 新型コロナウイルスの流行により影響を受けた業種は多岐に及ぶが、中でもホテル業界が受けた影響は甚大だった。2020年夏の東京五輪開催を視野に、2020年の政府による訪日外国人客数の目標値は4000万人に設定された。ホテル客室数はここ数年で増え国際情勢が変化する中でも、国内のホテル客室の稼働率は高水準で推移していた。

コアグローバルマネジメント代表取締役の中野氏

 それが新型コロナの影響で激変した。観光庁によると、宿泊者は3月に前年同月比ほぼ半減し、4月には約8割減。外国人の宿泊者は3月には約9割減で、4月にはほぼ消失した。国内ではホテルの倒産も報じられた。さらに4月の緊急事態宣言の発出以降、全国で外出自粛要請や休業要請が出され、出張が激減して、ビジネスホテルの需要そのものがなくなった。

 ホテルクインテッサ東京銀座では、レストランがなく、宴会も受け入れていないのは不幸中の幸いではあるものの影響は甚大なものだった。中野氏は「営業ネットワークにより台湾からの年間40万人を国内に呼び込んできたが、状況は壊滅的。昨年対比で宿泊客はおよそ95%も減った」と言う。

 今後、感染者の発生が減少傾向に入ったとしても、コロナを視野に入れると懸念点が残る状況が考えられた。日々、代わる代わる客室を異なる人々が利用し、客室を共有することになる。元々広がっていたシェアリングエコノミーにとって、ウイルスの感染は強い逆風となる。中野氏は「ホテルは空間のシェアビジネス」と言うように、ホテルに顧客が戻るまでの時間は長期に及ぶ可能性も考えられる。

枕は宿泊客がチェックアウトの都度廃棄し、新品に取り替える

 政府が呼びかけた「新しい生活様式」に基づいて、宿泊業団体は5月に「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版)」で接触感染や飛沫感染の予防などの一般的なルールに加え、対人距離を2mを目安に取る、消毒設備、マスク着用、換気、健康チェックなどの基本原則から、定期的な消毒や洗浄、アクリル板などの遮蔽設備などのルールを示している。

 中野氏が考えたのは、ホテルのオペレーションの中から新しい価値を生み出すという自社の強みを見つめ直すことだった。中でも注目したのが、清掃や設備管理の仕組みを生かした新たな空間づくりだ。