厚生労働省と連携して「エビデンス」発信に注力

すべての人がサ付き住宅に住めるわけではありませんから、個々の「住宅」の役割も重要になりそうです。

 もちろんです。それに、自宅に住み続けたいというニーズは大きく、国交省のモニター調査では、71.8%の人が自宅で最期を迎えたいと回答しています。その一方で、人が居住している約5210万戸の総数のうち、耐震性を満たしていない住宅が約900万戸、バリアフリー、省エネによる断熱性のいずれも満たしていない住宅が約2200万戸にも上ります。このため、最期を自宅で迎えたいという国民のニーズに応えられる質の高い住宅の整備も重要となってきます。

 ヘルスケアとの関わりでは、住宅の温熱環境がとても重要になってきます。近年の研究により、住宅の断熱性能を高めることで健康に住み続けられるとのエビデンスが得られつつあるのです。国交省が「スマートウェルネス住宅等推進事業」で補助している慶応大学の伊香賀(俊治)教授の研究では、断熱性能の向上により室内の温熱環境が改善されると、起床時の血圧が有意に低下する、夜間頻尿回数が有意に減少するなどの知見が報告されています(関連記事:「住宅を断熱改修すると健康になる」は本当か?)。国土交通省では、省エネ改修等についての意識啓発を促すため、厚生労働省と連携してこれらのエビデンスについて分かりやすく紹介するリーフレットを作成し、情報発信しているところです。

エビデンスが出始めたのは興味深いです。国交省としてはどのように住宅と健康の関係にコミットしていくのでしょうか。

 2019年5月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」、いわゆる「建築物省エネ法」を改正しました。今回の改正により、個人が住宅の新築等を行う場合に、建築士が断熱基準をはじめとした省エネ基準への適合性等を建築主に説明することが義務づけられることとなりました。

 ここで期待しているのは建築主の省エネに対する意識の醸成であり、2021年4月にスタートする予定で準備を進めています。増改築を行う場合も対象となりますので、断熱改修した場合の健康を含めた効果についても、建築士が説明を行うことを通じて建築主の省エネに対する理解が進み、断熱改修が進むことを期待しています。

 今後、ハウスメーカーや中小の工務店などを対象にこうした知見を周知する必要があります。これまで住宅事業者等が省エネを提案する場合は経済性にフォーカスし、光熱費削減効果を中心とした提案が多かったものと思いますが、こうしたエビデンスが得られつつあることもあり、これからは厚生労働省の理解と協力を得て、“健康”にも注目して省エネ化を提案していくことになると思います。今後、改正建築物省エネ法の周知の機会等をとらえて、リーフレットなどを活用しながら周知を図っていきたいと思います。