新たなビジネスに先進的に取り組む事業者を積極的に支援

各省の枠組みを超えて住宅×健康に取り組んでいくと。

 やはり国交省だけだと、健康に関する説得力が薄れてしまいます。このため、住宅を担当する国土交通省と健康を担当する特に厚生労働省が連携して取り組むことが重要になります。厚生労働省とは、高齢者の住まいという観点で、国土交通省と人事交流が行われています。私自身、国土交通省から補佐級で厚生労働省に出向して、高齢者住まいの政策を担当していましたし、課長として再度出向した際には、高齢者住まいのほか介護老人福祉施設や介護ロボットを担当していました。

今後、住宅行政に「エビデンスに基づいた健康」という新たな考え方が入ってくる際の課題は何でしょうか?

 確かに新しい考え方に対してはそれぞれの業界で様々な反応があると思います。2016年に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」において、健康管理、IoT住宅などの新たなビジネス市場の創出や拡大を促進することが位置づけられており、国土交通省では住宅業界においてこうした新たなビジネスに先進的に取り組む事業者に対して積極的に支援していくこととしています。

Beyond Healthが、2030年に実現しているべき「住宅」空間をイメージしてイラスト化したBeyond Home(未来の住宅)。センシングやスクリーニングのテクノロジーが、ふろ場や、トイレ、階段の手すりなど各所にそれと意識させないような形で設置されている。空調、照明などを最適化して良質な睡眠をとれるようにしたり、室内で楽しく運動ができる仕掛けも。玄関ではエアフィルターなどによる感染症対策を施している。今回の記事では、建物全体の温熱環境(断熱改修)について触れていく(イラストレーション:©kucci,2020)

 具体的には、「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」において、IoT技術を使って病気の早期発見を可能としたり、健康で一日でも長く自立的な生活を送ることができる住宅やサービスなどを提供するリーディングプロジェクトに対して支援を行っています。例えば、自宅内でバイタルデータを測定し、AIによる分析をもとに温度・湿度をコントロールしたり、異常値が出たときには離れて暮らす家族に通知したりする取り組みです。これらの仕組みを実際に導入した住宅の居住者にアンケートしたところ、「健康管理の意識が高まった」「離れて暮らす親の健康状態がわかる」などのポジティブな回答が得られています。

 また別の取り組みでは、体に負担をかけない非接触センサーを導入して、各部屋での移動範囲や行動量を把握し、健康管理を行う実証が行われています。その中では、ベッドの下にもセンサーを敷き、離床、入床の時間はもちろんのこと、覚醒、入眠、睡眠時の深さや浅さをデータ取得することによって、睡眠の質を総合的に判断し、助言しています。