Beyond Healthは、「健康で幸福な人生100年時代を可能にする」社会の実現に向けたビジョン「空間×ヘルスケア 2030」を提案し、それを具現化するためのプロジェクト「ビジョナリー・フラッグ・プロジェクト(VFP)」を進めている(関連記事:目指すは「空間×ヘルスケア」の社会実装)。その一つとして掲げているのが、未来の住宅「Beyond Home」だ。コロナ禍で今、住宅リフォームに対する需要が大きく変わりつつあるという。そこから見えるのは、自らの健康管理、具体的には「衛生」への意識変化だ。

 コロナ禍によって家で過ごす時間が増え、今まで目を向けなかった家の中の小さな不便さが気になるという声をよく聞くようになった。

 例えば、家の中でのプライベートスペースやワークスペース問題。この他、会社勤めの人の中には、今まで不在時間だった平日昼間の近所の音や日当たりなども気になる人もいるようだが、何と言っても多いのが、外出から戻って来てウイルスや汚れを家に持ち込んでいるのではないかと不安を抱える人の増加だ。

 住設メーカーや工務店は、「これらの問題をどうにかしたいと考える人が多くなり、リフォーム需要がぐんと増えた」実感があるという。

 コロナ禍で最初に需要が増えたのは、まずワークスペースの新設。その後の感染拡大によって、家の中に汚れやウイルスを入れないための対策として需要が増えたのが、玄関まわりと洗面スペースである。

 「従来、リフォームと言えばキッチンや浴室が中心だった。加えて、衛生面で外部から汚れやウイルスなどを家に持ち込みたくないと考える人が増えて、ここ1年で設置が増えているのが、玄関まわりと洗面スペース」(TOTO 商品営業推進部 浴室・洗面商品営業グループ 平野敬太氏)。

手洗いが家庭の第一優先課題に

 TOTOが2020年8月に行った「コロナ禍における生活意識と行動に関する実態調査」(全国の20~79歳、男女2197人を対象)によると、4人に1人が自宅をリフォームして住み続けたいという。そのなかで自宅の水まわりでの行動の変化について聞いたところ、約7割の人が「手洗いをする回数が変化した」、約6割が「帰宅後すぐに手を洗う」と答えた。「水まわりで欲しい設備は」との質問には、自動水栓、除菌機能が上位に入り、玄関近くで手が洗える洗面台が欲しいという意見が11.7%もあったという。

 この需要の拡大と並行して注目されるようになったのが、玄関まわりにも設置できるコンパクトな洗面台で、各社から新商品が発表されるようになった。興味深いのは、コロナ禍の状況を見て各社が一斉にコンパクト洗面台を発表したわけではないところ。

 「洗面化粧台は一家に一台が今までの文化。そこに、生活スタイルの多様性が見えるようになって、インテリアにこだわりを持つ人が増え、“セカンド洗面”として提案され始めたのが10年ほど前のこと。ここ数年、造作でこだわりの洗面台を設置した人のSNS投稿が目立つようになってきている」(LIXIL キッチン・洗面商品部 洗面CX推進グループ 近藤亮介氏)。

 インスタグラムやルームクリップなどのSNSでの盛り上がりによって、各社がセカンド洗面を提案し始め、2020年から2021年にかけて新商品の発表が続いたのが本当のところ。コロナ禍と時期が重なったことで注目度が高まり、予想以上に出荷台数が増えているのだそうだ。

コンパクトでインテリア性の高いセカンド洗面

 セカンド洗面と脱衣所やトイレの洗面台との違いは、コンパクト設計、間口に合わせて幅が選べ、空間の雰囲気に合うように素材や質感にこだわったインテリア性が高いことだ。

 「家で過ごす時間が増えたことで、家の過ごし方についてアンテナが高くなっている人が増えていると感じる。セカンド洗面としては、見た目がキレイな陶器製や、丸みがあるベッセルボウルが人気」(トクラス広報担当 森下沙樹氏)。

 トクラスで受注が増えているのは「LESTO」。どこにでも設置できるように間口に合わせてカウンターをオーダー(750~1800mm)でき、奥行きがコンパクトでおしゃれな陶器製のボウルが好評だ。空間とテイストを合わせることができると人気なのが、「ベッセルボウル&マルチカウンター」。耐久性が高く、質感を出しやすい、トクラス独自の人造大理石を使用し、鋳物や焼き物のような質感を再現している。「TENOR」シリーズの黒や濃い色が特に人気だそうだ。

上はトクラスの小型の洗面ボウル「ハーフベッセルボウル[MARU] TENORアイアンブラック」と「マルチカウンターTENORバーストブラウン」。下はトクラスの「LESTO」シリーズ(写真:トクラス)

 リクシルでは、SNS投稿の盛り上がりをきっかけに短期間で新商品を開発し、「どこでも手洗」を2020年3月に発表した。「どこでも手洗」は、手洗い器やカウンター(木製またはタイル)、水栓などを自由に組み合わせられるシリーズ。リクシルの得意分野でもある焼き物をボウルに選び、SNSで注目されていたタイルカウンターをラインナップ。カウンターの奥行きは約300mmとコンパクトで、手洗いに特化したものだ。展示会でも大変好評で、1年間で達成すべき月間目標台数を7カ月で達成したという。

 リクシルの近藤亮介氏は、「従来の造作洗面台は、部材を一つひとつ選んで発注していた。組み合わせやサイズを確認し、現場で施工するなど手間がかかっていた。『どこでも手洗』は、現場で扱いやすいようにパッケージにして出荷し、間口に合わせて簡単にカットして調整できるのが特長。現場で扱いやすい商材ということが、売り上げが伸びた理由の一つになっている」と話す。

4枚ともリクシルの「どこでも手洗」シリーズ(写真:リクシル)

病院や学校の実験用ボウルをヒントにした洗面が人気

 TOTOでは、2021年2月に大幅なモデルチェンジをした洗面台シリーズ「ドレーナ」を発表した。「TOTOの調査では、洗面スペースのリフォームの際、デザイン性を重視する人は22%という報告がある。デザインで人気が高いのは、造作家具のような木目カウンター。そのようなニーズにこたえるものとして『ドレーナ』をモデルチェンジした」(TOTO 平野氏)

 ドレーナの特長は、カウンター、キャビネットの側板や扉、鏡を家具のような木目調の同色でコーディネートできること。そして、シャツや靴までジャブジャブ洗える、陶器製”広ふかボウル”だ。

TOTOの「ドレーナ」シリーズ(写真:TOTO)

 「洗面ボウルのデザインは、ベッセルタイプが圧倒的に人気。その次にSNSなどで人気が高いのが、病院や学校の実験用として使われている、広くて深い洗面ボウルだった。実験用の洗面ボウルを家庭に造作して使っている人が16%もいることが分かった」(TOTO 平野氏)

 インテリア感度が高い人の中では、病院・実験用の洗面ボウルが憧れの対象になっているそうだ。とはいっても、これは業務用で一般家庭の洗面には対応していないため、現場での造作作業は、時間もコストもかかるものだった。それが、「ドレーナ」で解消されることになる。2月の発売後、出荷台数はそれまでに比べると2倍になっているということからも需要の高さがうかがえる。

TOTOの「レストルームドレッサー コンフォートシリーズ」。トイレ用のコンパクトな洗面台を玄関などに設置する例が増えている(写真:TOTO)

 もう一つの需要として最近、トイレ用のコンパクトな洗面台「レストルームドレッサー コンフォートシリーズ」が、セカンド洗面として玄関や廊下などに設置されることが多いという。

 「コロナ禍で玄関水まわりをどうにかしたいという声が6割もある一方で、実際にリフォームとなるといろいろ大変そうと思っている人も多い。こういった商品をきっかけにしてもらえたら」(TOTO 広報 岩崎愛氏)。

主戦場となった玄関リフォーム

 2020年から“帰宅したらすぐに手洗いを”という提案をしているパナソニックでは、見せられる洗面として、壁付きキャビネット、足元がスッキリの「シーライン」シリーズを玄関洗面として注力している。早くから玄関に洗面台をつけることを提案してきたこともあり、シーラインには、コロナ禍で安心安全を確保できる機能が付加されているのが特長だ。

 「奥行きは530mmでタッチレス水栓をつけることができるのが特長」(パナソニック ハウジングシステム事業部 水廻りシステムBU 木下優紀氏)。タッチレス水栓はコロナ禍で出荷台数が大幅に増えたという。

 「タッチレス水栓は当初、触わらないから汚れない、掃除がラクというテーマでしたが、コロナ禍になりハンドクリーナーでタッチレスタイプが出てきたことも追い風になり、触わらないから衛生的という考えに変わってきた」(パナソニック 木下氏)

 コロナ禍でもう1つ需要が伸びているのが、玄関収納だ。「コロナ禍でのリフォーム需要について工務店等にヒアリングしたところ、玄関にコート等の上着をかけられ、ストック品等を置ける収納の需要も増加しているということが分かった」(パナソニック ハウジングシステム事業部 建築システムBU 鈴木憲子氏)。人を介して外から入ってくるものはなるべく玄関で制限して、部屋には持ち込まないのが、ここ1年で常識になりつつあるようだ。

1枚目と3枚目はパナソニックの「シーライン」シリーズ、2枚目はパナソニックのトイレカウンターTS(写真:パナソニック)

 この1年でリフォームの焦点は玄関まわりになってきた。今まで、玄関は靴を脱ぎ履きをする場所という位置づけだったが、帰宅したらまず手を洗う場所になり、外からの汚れやウイルスを持ち込まないために身支度を整える場所になった。さらに、リモートワークが定着してきたことから、玄関を土間にして、趣味や仕事の場として使用する事例も多くなってきたようだ。

「持ち込まない」文化は洗濯乾燥にも

 さらに、外の汚れやウイルスを家の中に持ち込ませないというニーズは、玄関以外にも広がっている。家から帰ってすぐに服を着替えて体を洗う。その時に出た洗濯物を「再び外に干したくない」として、一切外干しをせずに毎日の衣類乾燥を乾燥機で行う消費者が増えているそうだ。

 「外干しは、花粉やPM2.5等を衣服に持ち込むことになる。そうした外干しのリスクを懸念する消費者も多い。外干しをせずに短時間で洗濯物を乾かしたいというニーズと、洗濯物を80度以上の熱風で乾燥させ、衣類の嫌な生乾き臭の原因菌なども除去できることなどから、ガス乾燥機の売り上げが近年特に高まってきている」(リンナイ 営業本部営業企画部PRグループ・後藤圭介氏)。また同社はガス乾燥機によるウイルス除去性能評価を行い、特定条件下で2種類のノンエンベロープウイルス、1種類のエンベロープウイルスを99%以上除去できることを発表した。

 同社のガス乾燥機「乾太くん」の2021年3月期の国内販売台数は前年同期比34.5%の増となった。「乾太くんを中心にして、新築やリフォーム時に、洗濯から乾燥・アイロンがけ、衣服を畳んでしまうまでを1部屋で行う広いランドリールームを設計し、玄関に近い位置に配置する消費者も多い」(リンナイ・後藤氏)そうだ。

リンナイのガス乾燥機「乾太くん」(写真:リンナイ)

 コロナ禍を機に、家の中の生活における衛生の概念が大きく変わり始めた。そこでは住宅設備や家の間取りに対する要求もこれまでとは異なる。そのニーズに柔軟に対応する家づくりや設備提案が大切になってきているようだ。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

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[登壇者]
経済産業大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官 兼 復興大臣政務官
参議院議員
佐藤 啓 氏
奈良県立医科大学
MBT(医学を基礎とするまちづくり)研究所 副所長(研究教授)
梅田 智広 氏
ほか

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