先達から学び、ゼロから変える

 2017年、出発点は、藤田氏らの検討で「危機的」ととらえられた営業部門の問題だった。それは「顧客訪問回数の低下」である。顧客から問い合わせを受けての訪問ではなく、イトーキから連絡して能動的にアポイントメントを取って訪問する回数のことだ。これを業績にひも付けられる「重要経営指標(KPI)」として重視していたにもかかわらず悪化していたのだ。「低下は顕著で、成長できるはずがないとみられた」

 この問題の背景にあったのは、モノ売りからコト売りへと商材が移行する事業の変貌だ。「顧客訪問回数の低下は、単純に働く人たちの時間の目減りが原因だった」と藤田氏は説明する。多様な顧客ごとに対応するために業務が複雑になり、営業だけでなく、総務や人事、経営企画、情報システムなど部門間の連携は不可欠になっていた。検討を進めていくと、同様な課題は営業部門に限らず全社に共通していた。解決しようにも、人が足りず、時短が求められ、仕事の質を高めるための能力開発も必要になっているという三重苦の状態。

 どうしてそんな時間が足りないのかを見ていくと、働き方の非効率が背景に確認できた。いわばオフィスに縛り付けられる旧来型の働き方が根強く残っていたのだ。「出社してから顧客訪問」「訪問後は帰社」「稟議」など、日本のどの会社にもある古くからの慣習が足かせになっていた。

 このときに働き方変革に向け、藤田氏らは海外のワークスタイルの研究に手を広げていく。こうして小国ながら経済成長を続けるオランダに着目するに至る。同国では1990年代から経済的な危機を迎える中で、パートタイマーを増やしたり、同一賃金同一労働を進め、労働時間の自由度を高め、テレワークを広げたりして労働生産性を押し上げた。「オランダの奇跡」とも呼ばれているが、この中で生まれてきたのが 「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)」と呼ばれる働き方で、ここに課題解決の糸口を見いだしたのだった。ABWの定義はオフィスの形や働き方など幅があるが、イトーキはこの分野に精通したヴェルデホーヘン(Veldhoen + Company)という企業にアプローチして自社の改革に考え方を取り入れることにした。

イトーキ新本社のワーカーの集中力、リチャージや睡眠をサポートする空間(写真:イトーキ、以下同)
イトーキ新本社のワーカーの集中力、リチャージや睡眠をサポートする空間(写真:イトーキ、以下同)
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