「医薬品のバリューチェーンを変える」

薬剤師が医療への関わりを深めていく中でどう動いていきますか。

 キーワードは「医薬品のバリューチェーンを変える」です。慢性期ケアでは担い手がおらず、効率化が求められているわけです。医療界において「効率」は、「質の向上」とトレードオフの関係にあるイメージから忌み嫌われるところもありますが、ビジネスモデルを確立していくことで二兎を追うことができると考えています。

 民間のビジネスモデルを適用し、薬局の提供できる価値を変えていきます。多様な接点から薬局の存在を知ってもらいます。服薬指導、アドヒアランス、ポリファーマシー解消、残薬の管理という薬剤に関わる価値ばかりではなく、食事指導や運動指導など、処方箋を受ける前から後までケアする価値を提供していきます。食事指導という面で言うと、自社で管理栄養士を50人以上抱え、入退院での食事指導の途切れをなくすような取り組みを始めています。食事や運動のコラボはどこでも考えられる点ですが、独自性を持って取り組みます。

岩手県矢巾町の岩手医科大学附属病院の敷地内に、産学官がコラボしてつくられたメディカルフィットネスジム「ウェルベース矢巾」に参画し、調剤薬局を併設しましたね。

 「ウェルベース矢巾」は、町や医大とともに建物の中に調剤薬局とフィットネス施設を入れ、住民の健康管理に主体的に関わろうとするもので、特に新しい取り組みです。高橋昌造町長の強いリーダーシップによるところが大きいのですが、医療提供の場において、矢巾町と岩手医科大学、さらに当社を含めた複数の企業、情報と知識を持って診断する医師が協働し、質の高い健康寿命延伸や重症化予防の取り組みを進めていこうと考えています。

<b>岩手医科大学附属病院の敷地内に開設された「ウェルベース矢巾」</b> (写真:井上 健)
岩手医科大学附属病院の敷地内に開設された「ウェルベース矢巾」 (写真:井上 健)
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 そこで進めたいのは「IT(情報技術)連携」です。全国的に医療情報を一元化する動きは個別に存在しますが、施設の枠を超えて普遍化しているかはクエスチョンマークです。ほとんどの地域では電子カルテの共有さえできていません。医療情報ばかりではなく、そのほかプラスの情報を入れればなおさら難しい状況でしょう。そこを何とか変えて、個人情報保護や同意取得も行いながら、包括的なデータベースを構築し、共通の基盤で専門職たちがアプローチできるようにしていきたいと考えています。病院を含め、運動や食事などの情報連携を進めて、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)のようにプラットフォームを構築していくのです。

 逆に言えば、情報共有すると、薬をきちんと飲むアドヒアランスや症状の改善などの医療情報に薬局側もアクセスできるようになります。アドヒアランスについては平均すると5割程度しか薬を飲めていないともいわれるほど。治療の効果を出す上でも、医療経済の上でも好ましくない状態です。薬局が患者に寄り添い薬剤の悩みを聴取でき、しかもIT連携が実現していれば、医師への情報のフィードバックも容易です。薬局の通常業務ではありますが、精度高くできるようになるのです。データ共有化が起爆剤となり、チーム医療の基盤が固まっていくのです。

 ウェルベース矢巾の取り組みを普遍化させていけるかは検証を要しますが、ベストプラクティスにしたいと考えています。調剤薬局チェーンの強みを生かし、地域や病院の違いを踏まえた全国展開も視野に入れたいと考えています。