“心臓部”はデータスペース

 未来の薬局に存在するであろう大きく4つの機能を想定し、それらを実施するスペースを描いた。具体的には、(1)データを取り扱うスペース、(2)スクリーニング&ヒーリングスペース、(3)コミュニケーションスペース、(4)ピッキングスペース、である。

 (1)のデータを取り扱うスペースは、Beyond Pharmacyの“心臓部”ともいえる。ここには、住宅や会社、学校、商業施設などのあらゆる場所で取得された生体情報(バイタルデータ)が蓄積されていく。このデータをAIがモニタリングし、異常値が検出されたら薬剤師にアラートを出し、薬剤師の判断でケアを行う。

(イラストレーション:©kucci,2020)

 薬剤師が受診すべきと判断した場合は受診勧奨を行い、生活習慣の改善を図れば対応できると判断した場合はオンラインで食事や睡眠の指導をする。生活のさまざまな場面で取得されたデータから、いち早く危険を察知して速やかに適切なケアを行う。

 これによって、必要のない人が医療機関を受診することや適切な受診タイミングを逃して病気が進行してしまうこと、感染症が拡大してしまうことなどによる医療崩壊を防ぐ。まさに、薬局が住宅や会社、学校、商業施設などの生活の場と、医療機関をつなぐハブの機能を担う。

 (2)のスクリーニング&ヒーリングスペースでは、これまで薬局に行く必要のなかった人がふらっと立ち寄りたくなるきっかけを提供する。一つの手法として、疾患の予兆を把握できるスクリーニング機器や心身を癒すためのヒーリング機器を設置して、無料または安価で誰でも試せるようにすることを想定した。

(イラストレーション:©kucci,2020)

 機器は、企業が製品を販売する前に実証実験や市場調査を兼ねて提供することも考えられる。機器の性能や効果を検証する場になるかもしれない。これらは(1)のスペースに蓄積するデータの拡充にもつながる。

 もちろんスクリーニングやヒーリングの機器だけでなく、フィットネスジムや映画館などの付帯施設を設けることも想定できる。仕事や買い物の帰りに寄ってみたくなるようなシカケをサービスとして用意してもよい。ゲーミフィケーションの考え方を活用して、来店ポイントを貯められるサービスを採用するのも手だろう。エンターテインメントやアミューズメントの視点は未来の薬局を考えるうえで重要だ。