Beyond Healthは、「健康で幸福な人生100年時代を創る」ためのビジョン「空間×ヘルスケア 2030」を提案し、それを具現化するためのプロジェクト「ビジョナリー・フラッグ・プロジェクト(VFP)」を進めている(関連記事:目指すは「空間×ヘルスケア」の社会実装)。2030年に向けて、人間が生活を営む街のあらゆる空間を予防や健康増進に資するものにしていくというコンセプトだ。そんな中、「美容室」を地域の健康増進のハブとして位置付けようとする試みが富山で始まった。

(写真:山岸 栞依、以下同)
(写真:山岸 栞依、以下同)
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 「髪の毛の可能性」について知っていますか?
 髪の毛から、その人の何が分かるのか。グループディスカッションしてください――。

 2021年7月某日。富山市のある教室で、約50人の生徒に向けた講義が始まった。ここは美容専門学校の富山ビューティーカレッジ。生徒の多くは、いわゆる美容師の卵だ。

 実はこの講義は、この日初めて実施された特別カリキュラム。テーマは「美容と健康」。美容師の卵たちに、「健康」について学んでもらおうという試みである。

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 なぜ、美容専門学校が「健康」に関するカリキュラムを導入したのか。

狙いは“ウエルネスサロン”を生み出すこと

 その答えについて、富山ビューティーカレッジを運営する和楽グループ(富山県富山市)で代表取締役を務める林 不二男氏は、「美容室、そして美容師が生き残るチャンスを作るため」と語る。

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 美容業界は今、店舗過剰による競争激化で、市場は年々減少を続けているという。このため、美容師の離職率も高止まりしているのが実情だ。

 こうした中、美容師が健康に関する知識を習得し、顧客に健康に関するアドバイスができるようになれば、美容師の新たな価値創造につながると林氏は見る。つまり、ヘアデザインだけではなく、ヘアケアからライフケアまでアドバイスできるような“ウエルネスサロン”を生み出そうというわけだ。いわば、美容室を地域の健康増進のハブにすることを目指す。

 「美容師は、顧客との信頼関係があり、健康に関する何げないことも相談しやすい相手。健康についてのアドバイスができるようになれば、美容室が生き残るキッカケにもなり、顧客の健康増進につながる。Win-Win(ウィンウィン)だ」と林氏は強調する。

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 今回の取り組みのキッカケの一つになったのは、髪の毛から体の栄養バランスを検査する「いこらぼ(毛髪栄養検査)」。icoi(東京都新宿区)が提供しているサービスだ。冒頭の講義は、同社と富山ビューティーカレッジが連携して開設したものである。

美容室だけでなく異業種連携で未病対策と地域活性化を図る

 いこらぼ(毛髪栄養検査)は、髪の毛から体内にある必須ミネラル12元素、有害金属5元素をチェックできるサービス。根元~約3cmの髪の毛を100本ほど送ることで、3~4週間後に検査結果が届く。

 今回の講義を担当した講師も、実はいこらぼ(毛髪栄養検査)を提供するicoiの社員。元々、美容師として働いていた経歴を持つという。

 講義の中では、必須ミネラルや有害金属とはどういうものか。そして、それらが健康とどんな関係があるのか、などといったことを分かりやすく説明していた。

 同サービスに必要な約3cmの髪の毛100本を切る実演も披露。「髪の毛100本は、想像するより少ない」ことなどを説明。実際に、希望する学生の髪の毛を切り、検査に回す様子を実演した。

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 富山ビューティーカレッジを運営する和楽グループは今回の講義後の2021年7月末、北陸最大の食品スーパーを展開するアルビス(富山県射水市)との協業を発表した。この協業は、美容室の顧客に対して、適切な食材や総菜メニューを紹介し、提供するためのものだという。

 カットした髪の毛から、不足する栄養素を把握。それを補う食材を紹介。実際の購入につなげる――それが同グループがイメージする姿だ。美容室をハブに、異業種の連携で未病対策と地域活性化を図る。そんな取り組みの今後に、引き続き注目していきたい。


(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

【お知らせ】
Beyond Health特別セッション [日経クロスヘルスEXPO内]
これが近未来の新市場「空間×ヘルスケア 2030」の全貌
2021/10/22(金) 10:00 ~ 11:20(オンライン)

<聴講無料・事前登録制>


[登壇者]
経済産業大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官 兼 復興大臣政務官
参議院議員
佐藤 啓 氏
奈良県立医科大学
MBT(医学を基礎とするまちづくり)研究所 副所長(研究教授)
梅田 智広 氏
ほか

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