従業員同士の交流促進にも生かす

 鹿島では、これまでにもスマートビル開発やウエルネス空間の提供に取り組んできた。「近年の建築業界では、知的生産性向上に向けて階段利用や歩行が有効であるとの見解から、オフィスに階段をどう盛り込んでいくかも一つの課題とされ、我々も取り組んできた」(鹿島建設 技術研究所 建築環境グループ 担当部長の金子弘幸氏)。シミュレーションなどを使って検討する中で、例えば人が集中しがちな食堂利用について、少しピークをずらして利用するようにユーザーに通知を出せば、階段やエレベーターなどの人の滞留を抑えることができることは明らかになったが、価値が伝わらなければ人は通知には従ってくれない。そこで目を付けたのが、行動変容に関する研究開発を進めていたOKIだった。

 OKIが行動変容に関する事業への取り組みを本格的に開始したのは2015年のことだ。当初はドラッグストア等の薬剤師を介してユーザーの行動変容を促すシステムを開発するも、人件費がネックになったことから人を介さないサービスを模索し始めた。2018年からは歩行や睡眠に着目し、リアルタイムでユーザーに行動を促す研究開発を進めてきた。両社では以前から共同で進めるプロジェクトがあり、OKI側が紹介した行動変容技術に鹿島が興味を示し、オフィスビルに特化した今回のサービス開発に至った。

 今回は実証実験2カ月分のデータをまとめて状況を公開した段階とし、今後は長期的なデータ取得により個人の健康志向と行動促進の度合いに関するデータ分析を進めるとする。「メッセージ内容と通知タイミングのズレを感じるケースもあり、大量データの蓄積によりアルゴリズムを成長させる必要がある」(OKI 櫻田氏)。

 同時に実用化に向けた取り組みも加速している。鹿島では、2021年5月の段階で設計入札案件5件に今回のサービスを提案したとする。新型コロナ感染症対策の観点からはエレベーターなどの混雑回避にも活用できるなど、オフィスにおる行動変容技術の応用の幅は広い。「ABW(Activity Based Working)などでフリーアドレス化が進む中、従業員同士のコミュニケーションといった交流促進にも生かしていきたい」(鹿島建設 鈴木氏)。健康的な活動の提案に加えて、働く場所やワーカー同士をつないだ交流促進を提案し、心身の健康や知的生産性、快適性向上への活用を見込む。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

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