リモート・在宅で見えにくい働き過ぎに留意

 しかもリモートワーク・在宅勤務では、会議室への移動や取引先への訪問などを伴わないため余白の時間を確保しづらい。森田氏は「余白の時間を確保しづらい中、健康面での悪影響がベテラン世代で目立つ。これは今後、課題になる」と指摘する。気を付けたいのは、働き過ぎだ。

 池田氏は「一人ひとりの働きが目に見えない分、リモートワークは働き過ぎを生む懸念がある。働き方の柔軟性を高め、裁量の幅を広げるのはいいが、日本人は長時間労働に慣れているだけに、健康面への影響に留意すべきだ」と警告を発する。

 もともと、柔軟な働き方を研究テーマにすえてきた池田氏。きっかけは、東日本大震災だ。「余震や原発事故の影響で出社できない状況になった際、それまでの、全員が同じ時間に同じ場所に集まって働くことでは対応できないことが分かった」(池田氏)。

 柔軟な働き方とは、どのようなものか。「柔軟」には、3つの要素がある。まず「時間」である。就労時間の縛りを緩め、働きたい時間に柔軟に働けるようにする。フレックスタイム制をはじめ、様々な制度が確立されてきた。

 次に「場所」。働く場所はオフィスに限らない。シェアオフィスや自宅など働きたい場所で柔軟に働けるようにする。リモートワーク・在宅勤務は一例だ。

 最後は、「タスク」。人生の中でやりたいこと、やるべきことは、仕事に限らない。家事もあるし、学びもある。それらを一塊の「タスク」と位置付け、例えば1日の中、1週間の中、1カ月の中で、柔軟に組み合わせられるようになるのが理想だ。

 ただ、どの程度の柔軟性が必要なのかは個人によって異なる。組織で一律に決められない。池田氏は「個人と組織に合わせ、柔軟性をどう確保するのがいいのか──。個人個人が互いの事情を認め合いながら設計できるようになればいい」と訴える。なぜ、そうした柔軟な働き方が求められるのか。

 池田氏が柔軟な働き方の先に見すえるのは、人生の豊かさだ。「仕事でがんじがらめに縛られる人生は、豊かでない。自律的に働くことで、仕事以外の部分も満たされてこそ、幸せ。やりがいを感じる。そのためには暮らしたい場所に住み、やりたい仕事に就ける。その実現が、究極の目標だ」。とはいえ、そうした自律的な働き方の実現に課題があることも見えてきた。

「コロナ禍により、健康面で疲れが目立つベテランワーカーが増えており、今後大きな問題になる」と森田氏
「コロナ禍により、健康面で疲れが目立つベテランワーカーが増えており、今後大きな問題になる」と森田氏
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