気持ちを盛り上げるのもオフィスの役割

 オンライン・コミュニケーションの作法・話法が確立され、Web会議をフル活用できるようになれば、対面ではなくむしろオンラインで開催しよう、という会議がもっと生まれていく可能性が見込める。とはいえ、リモートワーク・在宅勤務が強いられるわけではなく、従来通りの働き方で出社を望む人はオフィスからWeb会議に参加すればいい。

 オフィスでのコミュニケーションを考える上では、今後、一人ひとりが時間を調整し1つの場所にわざわざ集まるようになると、その分を成果につなげることを意識したい。それはつまり、オフィスとはどのような場なのか、組織として成果を上げることに目を向けた再定義が求められるということだ。

 あらためてオフィスという場の役割は何か──。池田氏の見方は、「仕事の成果を高めるようなホルモンを分泌させる場」である。「離れ離れだと、みんなで仕事に取り組んでいても、ドキドキ、ワクワクすることがなく、一体感や達成感が生まれにくい。気分を盛り上げるのが、オフィスという場の役割ではないか」。

 空間のキーワードは、非効率と多様性である。「昔のオフィスは、オペレーションを効率良く進めるための空間。滞りなく、またエラーなく、短時間に、仕事を右から左へ流していく、均質で刺激がない工場のようなものだった。ホルモンを引き出すには、その真逆のつくりが求められる。好みの空間に身を置けるように、デザインには多様性も打ち出していく必要もある」(池田氏)。

 コロナ禍を背景に大きく変わりつつある個人個人の働き方と、組織としての成果を生み出すオフィスという働く場。今後の研究に向けて、どのような問題意識をいま持つか。

 森田氏が挙げるのは、「幸福感」と柔軟な働き方を巡る日本企業としてのバランス確保だ。「柔軟な働き方が目指すのは、誰もが幸福感を抱けること。ただ、柔軟性をどの程度まで確保するのかという点は、日本企業としてのバランスがあると思う。自律や個人の幸福を追求する一方で、組織としての成果や企業の存在意義も模索していく必要がある」。

 池田氏は「美しさ」を挙げる。「オフィスには今後、『美しさ』が求められる。『美しさ』とは単純に華美につくるということではない。オフィスは会社組織の思想、社会や社員に対する姿勢を表すものでもあるから、オフィスが貧相であれば、その会社の理念も貧相ということになりかねない。オフィスに『美しさ』が感じられ、まっとうにつくられていれば、社員は会社から大事に扱われていると思い、期待に応えようという使命感も生まれる」。

 一人ひとりが自らの働き方をデザインするようになる流れは加速するに違いない。時代の流れの中、会社組織はどのような働き方を求め、どのような働く場を提供するのか──。根っこに「幸福感」「美しさ」に象徴される哲学が求められる時代を迎えている。

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(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

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ほか

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