医療にまで行かずに済む仕組みづくりで町の財政健全化も目指す

 今回は、1つ目と2つ目の課題解決策に関して話を聞いた。まず、健康寿命延伸と医療扶助費抑制については「セルフメディケーションを徹底し、できるだけ医療にまで行かない仕組みづくり」が中心となる。吉岡氏は、矢巾町の恵まれた医療環境が逆に気軽な病院利用を招き、適切な受診行動がとられていない現状があると指摘する。これにより同町の医療扶助費は2025年に総予算の25%に達すると推測され、財政負担が今以上に重くのしかかってくるという。

 矢巾町がスーパーシティ構想で描く、地域住民が生活していく中で健康でいられ、かつ適切に病院を受診するためのデジタル活用のイメージは、図1の通り。

図1●矢巾町がスーパーシティ構想で描くデジタル活用のイメージ(資料提供:矢巾町)
図1●矢巾町がスーパーシティ構想で描くデジタル活用のイメージ(資料提供:矢巾町)
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 「セルフメディケーションでは、血液採取による健康チェック、OTC(一般用)検査薬のドラッグストア販売、ウエアラブル端末(アップルウォッチ)によるバイタルデータ測定などを盛り込んだ。ウエアラブル端末のデータは日常的なPHR(Personal Health Record)として蓄積され、家電とも連動できる。医療を受けた後のデータはふんだんにあるが、それ以前のデータはよくわかっていない。それらのデータをスーパーシティ構想の多様なデータとAPI連携すれば、生活環境由来の病気の発症との因果関係が見えてくる。

 発症のアラートを受けた住民は、アプリ内から保健師に症状を相談できるようにする。相談を受け、ドラッグストアで薬品を購入すれば済むのか、かかりつけ医に行ったほうがいいのか、あるいは救急を要請したほうがいいのかなどをアドバイスするサービスを考えている。我々はこれをトリアージと位置づけ、受診適正化に役立てるつもりだ」

 並行して医療分野でも先端サービスを導入して適正化を図る。急性期を除き、回復期や慢性期ではオンライン診療やオンライン服薬指導を積極活用。オンライン服薬指導の流れでは、薬の非対面交付を内閣府に提案している。「高齢化が進むことを鑑みても、“どこでも病床”を実現しないと地域医療がパンクする。いざ医療にかかる際には継続的なPHRや既往歴などを活かす」(吉岡氏)。