「楽しさ」でツールの活用を引き出す

 2つ目のダイバーシティに対応した多層型コミュニティとセーフティネットの再構築については「目的型コミュニティ」と「電子型コミュニティ」の2つを想定する。目的型コミュニティとは、趣味、健康活動、学び直しなど、興味・関心のあるテーマを軸に形成される集団のこと。「地縁、血縁、自治会といったつながりが希薄になり、地域の担い手が減少してきた。将来的には地域包括ケアシステムさえ崩壊するのではないかとの危機感がある。ならば、自分が好きなことで主体的に参加するコミュニティによって人と人とのつながりを増やそうと考えた」(吉岡氏)。

 実拠点として、複数箇所に「スーパー公民館」を設置。すでに「やはばWi-Fi」と名付けた高速通信網を整備し、町内の約7割をカバーした。吉岡氏は「自宅にいながらスーパー公民館の催しに参加できるようになる。eスポーツなど、若者向けイベントの開催も可能。ITにより多世代の交流を促すことで、社会の一員として生きている誇りを持てるような社会にしたい」と展望を語る。

 電子型コミュニティは、オンライン上に行政総合ポータルサイトを設け、住民専用のSNSで緩くつながる世界観を描く。高齢者はスマホやPC操作に不慣れなため、先述したアップルウォッチをITツールとして用いる。画面をワンタップして任意の相手と会話できる機能をAPTECHが実装済みで、見守りにも役立つ。「バイタルデータの取得に加え、外部とのコミュニケーションに使える点が大きい。ツールの利用には、楽しさが必要。複数のきっかけからアプローチすることで装着率も高まるに違いない」(吉岡氏)。

 スーパーシティの最終採択は今冬を予定。セルフメディケーションの仕組みやアップルウォッチの配布などは採択の結果を待って本格的に開始するが、吉岡氏は「仮に採択されなくても、既存技術の連携でできるところから取り組んでいく」と意気込みを見せる。この先も、小さな町の大きな挑戦は続く。

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(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)

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[モデレーター]
東京大学 高齢社会総合研究機構長
未来ビジョン研究センター教授
飯島 勝矢氏

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