0次予防を「健築」で実現

 イオンモール宮崎ではアプリを生かして、店舗内をウオーキングでめぐり、健康づくりに生かしてもらうキャンペーンも展開。歩いてスタンプを集めると景品やポイントがもらえるような仕組みも企画可能だ。中庭がモールウオーキングの出発点でかつ到達点となっており、健康を自然と促す仕組みがモール全体に組み込まれているような形になっている。来店客はショッピングしながら、知らず知らずのうちに健康になれるというわけだ。

 石川氏は「来店するお客様が健康になることそのものが好ましい。しかも、来店客が健康でいてくれれば、商業施設での購買行動も続いていく。店舗経営にとって地域の健康が重要なファクターであるともいえる」と説明する。

竹中工務店技術研究所未来空間部健康空間グループ長の石川氏 (写真:飯塚 寛之)

 イオンモール宮崎で取り入れられているような、無意識のうちに将来の病気のリスクを減らしていく発想は「0次予防」として注目されている。「多くの人の日常生活の動線の中にデザインしたり、プログラムを提供したりしていく。現役世代であれば、オフィスで過ごす時間は長いが、働く時間の中で意識しないうちに建築物が働きかけられると、空間を使う人は無意識のうちに健康になっていく。建築物が心と体に及ぼすポテンシャルは大きいと考えている」

 竹中工務店が建築と健康との接点を本格的に模索し始めたのは6年前の2014年のこと。2000年代に入り超高齢社会を迎える中で、建築や都市の問題として環境や持続可能性を重視する流れから、防災、安全、健康がより注目されるようになっていた。石川氏は技術本部の中でこれからの建築に求められる技術戦略を考えていた。「当時はまだ健康経営という言葉は今ほど一般的ではなく、持続可能な開発目標(SDGs)といった考え方が国連サミットで採択される手前。会社の方針というよりも、2010年にまちづくり総合エンジニアリング企業を標榜するようになり、未来を考えたときに、社会の中での役割として幅広くまちづくりを広く手がける発想の中で健康に着眼するようになった」