日本ではこうしたモデルがないが、海外では結構盛ん

具体的にはどのようなビジョンでしょうか。

谷津 がんセンター東病院では住民に開かれた病院を未来像として描かれていました。そこで“新しい医療のあり方”を外部に発信していきたいとの思いがあったようです。ご存じのように、がんセンター東病院はがんの治療に特化している国内トップクラスの病院。陽子線治療や希少がんを扱っているため、海外を含めて遠方から来る患者が非常に多いのですが、長距離の通院が患者の大きな負担になっており、長年の課題となっていたようです。

 もしホテルが隣接していれば、課題の解決策を提供できることになります。入院前後は患者本人だけではなく、家族や知人にとっても距離が近いほど助かりますから。自宅からの通院以外のソリューションを示すことで、皆さんの負担を少しでも軽減できるのではとの思いが出発点です。

今回の宿泊施設の建設計画(出所:三井不動産)
今回の宿泊施設の建設計画(出所:三井不動産)
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 日本ではこうしたモデルがありませんが、海外では結構盛んです。例えば米国のテキサス大学MDアンダーソンがんセンターにはホテルが隣接しています。参考のため試泊してみたところ、宿泊者の多くは患者やその家族で、米国ではこのモデルが成立していることを肌で実感しました。

がんセンター東病院周辺のホテルの現況は?

谷津 最も近くて柏の葉キャンパス駅前になります。三井ガーデンホテル柏の葉をはじめ、駅周辺には数軒のホテルがありますが、がんセンター東病院まではバスもしくはタクシーで7〜8分かかるため、少し不便な状況です。隣接のホテルなら、そのストレスもなくなります。

 患者アンケートでホテルが隣接していたら利用したいかどうかを聞いたところ、多くの人が「使いたい」と回答しました。中には「駅前のホテルより高くても泊まりたい」という人も一定の割合でいました。この結果は、隣接すること自体が1つの価値であることを示しています。病院に近ければ近いほど患者は安心感を得られます。物理的な距離の近さが与える安心感は大きいのです。ただし、ホテルで医療行為をするわけではありません。いろんな法的規制があるので、逆にセットで組み込むことは難しい。敷地内にあるものの、通常はホテルとして運営します。

川島 今回の特徴は、がんセンター東病院の土地を貸借して事業を行うこと。医療行為はできませんが、きめ細やかな連携やサービスは視野に入れています。入院前後の患者がホテルに宿泊し、具合が悪くなったときに病院と円滑な医療連携を図りたいと考えています。また、患者と家族が一緒に過ごせる広めの客室や、中長期滞在者のためのキッチンを備えた客室も用意する予定です。オープンが2022年夏を予定しているので、どんなシステムを入れていくのかはこれからがんセンター東病院とともに検証していきたいと思います。