ウェルネスオフィスが描く未来

コロナ禍の影響はあったのでしょうか?

 CASBEE-WOは大きな影響を受けました。先ほど述べた通り、CASBEE-WOは2019年6月に公開したわけですが、それ以前はウェルネスを意識したオフィスなどはほとんど存在していなかったと思います。そもそも、オフィスにおいて健康はそれほど要求されていなかったのです。

 それがコロナ禍によって状況は一変しました。皆が健康というものを、身近な命の問題として意識し始め、職場での健康管理についても考えざるを得なくなりました。CASBEE-WOは公開のタイミング的に、コロナ禍と切り離せないものとなったわけです。

 そこで、2020年3月にCASBEE-WOの最初の改定を実施しました。その際には健康問題や公衆衛生分野の対策、評価を盛り込み、それらをより強調しました。

では改定後のCASBEE-WOは感染症対策として有効と考えていいのでしょうか?

 新型コロナ対策、あるいは感染症対策として有効な部分もありますが、CASBEE-WOは新型コロナをはじめとした感染症対策のみを目的としたものではありません。WELLにおいても同様です。

 通常、感染症対策として要求されるのは、手洗いやうがい、触れる部分の消毒、換気などです。こうした対策は、基本的に働く人がそれぞれ個人で行うもので、ビル管理側で強制できるものではなく、ましてや建築物の性能・仕様での対策には限界があります。しかし、CASBEE-WOは公開のタイミング的にコロナ禍と無縁でいることが許されませんでした。本来は、健康を評価軸にオフィスビルの不動産価値を示すのが目的だったわけですが、オフィスにおけるコロナ対策の指標としての役割も期待されることになりました。

 これについてJSBCでも議論することになり、結果CASBEE-WOではフォローしきれない、具体的な新型コロナ対策・感染症対策を別途とりまとめ、チェックリストとして公開することになりました。それが、2021年6月に公開した「建物の感染対策チェックリスト(オフィス版)」です(関連記事:「建物の感染対策」はこう調べる、評価ツールが登場)。

 建物の感染対策チェックリスト(オフィス版)は、CASBEE-WOを感染症対策という目的で補完するものです。CASBEE-WOでは基本的に評価していない、ビル管理・運用サービスの面もフォローしています。また、2021年10月に公開したCASBEE-WO(2021年版)には、感染対策チェックリストの評価項目のうち、ビル管理側で対応できるものを反映しました。

最後に、ウェルネスオフィスで健康になれるのでしょうか?

 健康の評価は難しく、ウェルネスの具体的な評価方法はまだ定まっていません。ウェルネスオフィスで働いていても、健康になったのか否か、働く人本人も含め誰にも分らないのです。しかし「オフィス環境を快適に感じている人ほど、健康的である」という学術的データもそろいつつあります。私は、健康という評価軸でビルの基本性能を底上げしていくことができれば、そこで働く人々が健康になっていくと信じています。

 健康に対するビルオーナーや企業経営者への社会的な要求は高まっています。コロナ禍以降は働く人の意識も変わりました。ウェルネスに配慮するオフィスが、優秀な人材の確保や、知的生産性の向上につながったという研究成果もあります。「あのオフィスで働くと集中できる」「このオフィスで働くと体が楽になる」といった評価を得られるオフィスが、今後は必要とされていくのではないでしょうか。

(タイトル部のImage:jozefmicic -stock.adobe.com)