ソニーが目指すヘルスケア領域のオープンイノベーションは、他社とは一味違う。自らは黒子として、他社のサービス開発を後押しする立場に徹しようというのだ。その背景には、複数のヘルスケア事業を自ら立ち上げた際の苦労がある。基本機能を共通化して、他社と差異化できる機能開発に注力できるようにしている。(聞き手は菊池 隆裕=日経BP 総合研究所)

 インターネットサービスプロバイダの「So-net」を祖業とし、近年では高速光回線「NURO 光」で知られるソニーネットワークコミュニケーションズ(以下、ソニーネットワーク)。ソニーグループ内でネットワーク事業を牽引するイメージが強いが、ネット黎明期にポストペットを大ヒットさせたり、初期のディー・エヌ・エー(DeNA)に出資したり、医療情報サービス大手のエムスリーの立ち上げに関わるなど、多方面で挑戦を続けてきた歴史がある。

 その挑戦の歴史に新たに加わったのが「X.SINCE(エクスシンス)」だ。それまで個別に展開していたヘルスケアサービスを統合したプラットフォームとして、2021年4月から提供を開始した。

ヘルスケア新規事業の困りごとに着目

 なぜソニーネットワークがヘルスケアに本腰を入れ始めたのか。そして統合プラットフォームを提供する狙いとは何か。事業に携わる3人のキーパーソン(ソニーネットワークコミュニケーションズ IoT事業部 ヘルステック部 部長 木下直人氏、同 事業開発課 課長 鈴木宏紀氏、同 営業推進課 課長 廣部圭祐氏)に話を聞いた。

左から廣部氏、木下氏、鈴木氏(撮影:小口 正貴)
左から廣部氏、木下氏、鈴木氏(撮影:小口 正貴)
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X.SINCEとはどのようなものか。

廣部 これまでソニーネットワークでは、美肌、特定保健指導、食事、睡眠、体力・認知測定、オンライン・パーソナルトレーニングなどで7つのサービスを展開してきた。X.SINCEは、これらの事業で得たノウハウ、技術、アセットを統合したヘルスケア領域のサービスプラットフォームになる。BtoBtoC/Eサービスであり、ヘルスケア関連の新規事業立ち上げや既存サービスの拡張を支援する。

 提供形態には、アプリのSaaS(サース=ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型、既存サービスに拡張機能として組み込むAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)型の2つがある。SaaS型は食事記録、体脂肪率、睡眠記録、健康アドバイスなど複数の機能を自由に選んでもらい、カスタマイズ可能なデザインテンプレートを組み合わせて簡単に自社アプリとして運用できる。それだけではなく、企業独自のコンテンツとX.SINCEを連携させてサービス強化を図ることも可能だ。

 API型に関しては、まず食事解析・アドバイス機能からスタートした。ソニーのAI(人工知能)技術による食事画像解析技術や、ソニーネットワークが蓄積してきたヘルスケア関連のデータベースを融合し、Web APIで運用済みの自社アプリに連携できる。

 写真を1回撮るだけでメニューを明確に切り分けられるのが特徴で、非常に簡単かつ高精度に食事内容を画像で記録する。また過去のユーザー履歴から学習して、食事の選択候補を選べるようにしている。今後は肌解析、運動フォーム解析などの機能も提供していく予定だ。

食事解析APIの解析結果イメージ。撮影しただけで素早く食べ物の領域を判断して記録する(出所:ソニーネットワークコミュニケーションズ)
食事解析APIの解析結果イメージ。撮影しただけで素早く食べ物の領域を判断して記録する(出所:ソニーネットワークコミュニケーションズ)